携帯電話からプラットフォームへ脱却を図る

IDYの代表取締役社長である本田和明氏は、「携帯電話の機能として通話はすでに当たり前のものになっているが、出自が電話会社であるが故に、電話サービスを無料にすると課金できなくなるのではないか、との思いをキャリアが持っているのではないか」と指摘する一方、携帯電話の回線を無線網として特化した回線として考えると、「50件でクローズできるMVNOを携帯電話のインフラを活用することで実現できる」という。

取材に応じてくれたIDYの代表取締役社長の本田和明氏(手に持っているのが、今回の評価端末の実機)

50回線のみだと、ビジネスとしてどうなのかという疑問があるが、本田氏は、「例えばゴルフ場のカートに限定したMVNOとして、使い方として、例えばプロゴルファーの石川遼氏が打った飛距離データと自分の打った飛距離を比較しながら、GPSを活用しコースを見ることができる」といった新しいサービスを誕生させることができると指摘する。

こうした使用の仕方について、「携帯電話の派生ではなく、共通プラットフォームというものの派生として考えることで、端末に関係なく使いこなすことができる」という考えに基づくものだと本田氏は語る。

ただし、そうした考えを実現するためには、「Linuxに詳しい」と「"組み込み"というものを理解している」必要があるとするが、逆にこの2つが壁となり開発の敷居を高くしているという。この壁をいかに下げるのか。

もちろん、Googleが提供する「Android Dev Phone 1」であれば開発が可能だ。IDYが新たに提供を開始した「Android Build Kit 評価機(i430T)」を用いても、PC上で開発したアプリケーション(apkファイル)を端末にアップロードすることで、実機上での評価が可能となる。これだけであれば、一般的な開発キットと代わりがないが、それとは別に同社では「Android Build Kit フルパッケージ」を用意している。

これは、評価機のソフトウェアをソースコード(一部バイナリ含む)で提供することで、顧客によるソフトウェアの変更および、さまざまな開発に利用することが可能になる。

フルパッケージの提供について本田氏は、「ソースについてはIDYが対応できる。プロセッサとして活用しているMarvell TechnologyはWi-Fiソリューションも提供しており、これでハードウェア、ソフトウェア双方をサポートできるようになり、組み込みに向けた開発の敷居が下げられた」とし、「Androidは携帯電話というイメージを払拭したい」と抱負を語る。

端末の仕様は、プロセッサがMarvellのPXA310(624MHz)を採用。メモリとしてフラッシュメモリ256MB、RAM128MBを搭載するほか、8GBまで対応するmicroSDスロットを装備。モニタは2.8型でQVGA、タッチパネル対応となっており、このほか、200万画素のCMOSカメラ、GPS、IEEE802.11b/gの機能を備える。センサには3軸のモーションセンサを用いており、ポインティングデバイスにはジョグボールを採用している。

評価端末の構成ハードウェア一覧(これにバッテリが付属し、持ち運んで使用できる。バッテリの持ち時間も評価機ながら数時間は確保されているとのこと)

実際に触ってみたが、ジョグボールのタッチ感は良く、各種アプリケーションの起動などは体感だが、これまで触ってみた幾つかの組み込み向けAndroid開発キットは、言い方は悪いが動作にもっさりした感じを受けたのに対し、起動が1秒もかからない程度に早く、ストレスをほぼ感じずに快適であった。「片手でデモができるほか、バッテリ駆動が可能な端末を持ち歩くことで、新しい発想が生まれる。その新しい発想の価値を見出すためには実際に使ってみなければ分からないし、そうした取り組みがマーケットを自ら作り出していくことにもつながる」(同)とする。

本田氏は、そうした新しい発想を生み出すためには、4つの要素が必要だという。1つ目はIPフォン、2つ目はプレゼンス機能(今何をしているのか、といった情報)、3つ目が位置情報、4つ目がインスタントメッセンジャー(IM)である。

IDYが提供するAndroid Framework(左)とApplication群(右)(アプリはソースコードではなく、バイナリコードで提供となる)

特にIMは、受け取る側のリアルタイムコミュニケーションとして、例えば会議中は見れないが、会議終了後に見ることで、すぐに返答することができる、といったやりとりが可能になることから、通話に代わる重要な要素とする。