住民への呼びかけ、効果を示して参加意識を改善
2000年に居住がはじまった後、ハマービーの環境プログラムの主役は住民になった。住民がゴミをきちんと分類しなかったら、バイオマスプロダクションなどの次のアクションが大きな影響を受ける。自治体はどのように住民にはたらきかけているのだろう?
ハマービーの住民の多くは25歳 - 45歳。小さな子どもを持つ世帯が多いが、シニア層も増えている。湖に面し、ストックホルムまで4、5kmという立地条件から、アパートの値段はやや高め。中流かそれ以上の層が多いという。
だが、全員が環境への取り組みに賛同して引っ越してきたわけではなく、GlashusEttのアンケートでは、「環境プログラムがあるから入居した」と回答した人は6割だったという。当然、啓蒙活動は非常に重要になる。GlashusEttの出番だ。
GlashusEttは8年前、入居が始まったのと同時に設立された情報センターだ。まず、ハマービーに新しく入居した人に、ウェルカムパックとして地区の環境への取り組みとルールを記したブローシャーを手渡す。ガラス張りの建物の中には、ハマービーの環境への取り組み、歴史、プログラムの仕組みなどがわかりやすく展示されている。ハマービーに技術を提供しているクリーンテック企業も協力しており、自社ソリューションを展示する場として利用できる。
さらに、GlashusEttで有機性廃棄物用の特別のゴミ袋を配っていることから、住民は気軽に立ち寄り、新しい展示を見て理解を深めることができる。年に3回、活動内容を報告するリーフレットの発行、Webサイトでの情報提供もGlashusEttの重要な活動だ。
広報活動で注意していることは、「成果の報告」だ。「自分たちがどのぐらい環境に貢献しているのかがわかれば、もっと意識が高くなる」とFreudenthal氏。
実際効果は出ているようで、先のアンケートでは「ハマービーに住むようになって、環境への意識が高くなった」と言う人は7割に達したという。
経済コスト
大規模で野心的なハマービー開発は、環境にやさしいだけでなく、経済効果も及ぼしたようだ。
ハマービー開発に要する総コストは47億ユーロ。そのうち、自治体の投資は5億ユーロで、残りの42億ユーロは民間企業だ。自治体は、5億ユーロのうちの3億ユーロを土地の販売や賃借で回収できるだけでなく、アパートが汚水処理システムなどの公共インフラに接続するための接続料金も徴収できる。さらには、納税者も増えた。実際の公共投資は2億ユーロと見ている。
民間企業はどうだろう。建築に用いる資材などが定められていることは割高にならないのだろうか? Freudenthal氏によると、ハマービーの場合、追加コストはせいぜい2 - 4%のレベルという。もちろん、アパートを販売すれば、この投資は回収できる。
環境プログラムのインフラへの組み込み
ハマービーは2018年の完成を目指して、現在でもビルの建築などが続いている。
環境プログラムでは、「太陽エネルギーをもっと活用したい」とFreudenthal氏は言う。現在、ビルの屋上に黒いタンクを設置して温水供給に利用するなど、年間50%の温水をソーラーパネルから得ている建物もあるという。
ハマービーの取り組みが成功している理由として、「環境プログラムが建物やインフラに組み込まれていること」とFreudenthal氏はいう。ハマービーでは、取り組みの75%がインフラに統合されており、住民はライフスタイルを大きく変えることなく参加/貢献できる。
ハマービーモデルの成功を受け、スウェーデン政府は他の地区でもこのモデルを利用して地域開発を進めている。外国からの視察も多い。Freudenthal氏は、「地域の環境、行政形態、予算などはそれぞれ異なり、われわれのソリューションをそのまま利用することはできない。だがプランニングは適用できるはず」とアドバイスする。