ストックホルムの南の郊外にあるハマービー・ショースタッド地区は、環境へのインパクトを50%削減することを目指して土壌整備から開始したエコシティだ。ここにはゴミ収集車はなく、住民は街のあちこちに並ぶ太い円筒にゴミを入れる。近くを通る高速道路の上には緑に覆われたステンレスとスチール製の橋が架かり、家族連れがその上を歩いている。
ハマービーが目指すエコモデルとはどのようなものか、どうやって環境への影響を半減するのか、ハマービーの中心にある情報センターGlashusEttでマネージャーを務めるErik Freudenthal氏に聞いた。
オリンピック開催地立候補が残した成果
環境地区としてのハマービーの歴史は、1990年代半ばにさかのぼる。当時、2004年の夏季オリンピック開催地に立候補したストックホルム市は、テーマを環境とした。国際オリンピック委員会(IOC)に提出した計画で、環境に配慮した居住施設のある選手村をハマービーに建築することになっていた。結局はオリンピック開催地には選出されなかったが、住宅開発はそのまま進めることになった。これがはじまりだ。
その後、自治体、建築家、約25社のマンションデベロッパ、建築業者など関係者が集まり、持続可能な都市作りを話し合った。「マスタープランの前に環境の視点を加えることで、最新のクリーンテック技術やソリューションを取り込むことができた」とFreudenthal氏。建物の高さ、素材、緑化地帯、公共交通機関、ごみ収集システム、水道/下水道など、あらゆる計画を共同で練った。
その結果、ハマービーのマンションデベロッパは土地購入契約を結ぶ際、水道水設備に銅管とPBCパイプの利用を禁じる、家具付きフラットの家電製品はEUの電気効率基準でA以上のものでなければならない、暖房エネルギーを抑えるため断熱板や特製窓ガラスを利用する、などの条件に合意している。建築段階でも、50社の建築企業が1箇所に資材を配るロジスティックセンターを設けるという徹底振りだ。
「このような取り組みは世界でもあまり例がないのでは」とFreudenthal氏。デベロッパは自社マンションの特色を出しながら、調和と環境への配慮という点では他社と協業する - 「実現させようという強い意志なしには、達成し得なかった」とFreudenthal氏は振り返る。
建築は1993年にはじまった。最終的には1万1,000戸が建築される予定で、約7,000戸が完了したところだ。現在の人口は約1万8,000人で、完成すると2万6,000人 - 2万8,000人が住む町になる計画だ。