「ちょうどITというものが流行り始めた時代は、弊社も急成長した時期と重なります。社員数も増え、パソコンを大量に購入する必要があったのですが、ちょうどそのときにパソコン減税が施行されたのです」と長田氏。パソコン減税は平成11年から13年に適用された税法で、特定の情報通信機器について、取得価格の全額を償却費として損金算入できるというもの。これによって、会社にとってもコスト的に負担の少ない導入が行えたのだという。
「社員数も100名程度にまで増え、営業所も新設されるなど、電話だけでは不便になっていました。いわば、新しいコミュニケーション手段として、ITが必要とされていたのでしょう」と長田氏。こうした企業としての成長や時代の変化に後押しされる形で、日本ロックサービスはITを積極的に導入していったのだ。
システムを業者さんにやってもらうという認識もなかった
「そうした中でExchangeサーバを使ってメールをやる、という話が出て来ました。ドメインだけは取得していたので、手探りでシステムを構築しましたね」と杉山氏。Exchangeサーバを選んだ理由は、それまでWindows 3.1、95、98のほか、Windows NT 3.51もさわっていたこともあり、Microsoft製品に慣れていたことが理由だという。また、当時のマイクロソフトのBackOfficeはOSとセットになっていたので、導入しやすかった点も大きかったという。
サーバ等の設定は、すべて杉山氏がマニアル等を見ながら一人で行ったという。「システムを業者さんにやってもらうという認識がなかったのです。もし、外注していたら、別のシステムを導入していたかもしれません」と杉山氏は笑いながら語る。
こうして、社内にWindows NT 4.0とExchange Server 5.5 によるシステムが導入されることとなった。
そしてシステムは、その後、サーバ側をWindows 2000 ServerとExchange 2000 Serverの組み合わせにアップグレードし、Active Directory も導入された。しかしこのとき、ちょっとしたアクシデントが起こる。
「当初のシステムではいろいろとハードウェア的、ソフトウェア的な課題が大きくなったので、Windows 2000 Serverをベースとしたシステムへの移行を進めていました。しかし、自力でActive Directoryを構築し、Exchange 2000 Serverへと移行させるときに、過去の全てのデータを消してしまうという大失敗をしたのです」と杉山氏。
個人レベルでの移行も、ある程度の規模までは行えるが、いくらスキルが上がっても、100人規模のシステムではなかなか思うようにいかないこともある。この事件をきっかけに業者にシステム構築を任せることになったのだ。
「それまで、社内に情報システム部のような専門の部署があるわけでもなく、わたし個人がIT担当者という立場になってシステムを運用していたのですが、限界を感じましたね。そこで、オフコン時代からお付き合いのある業者に頼んで、システムを構築してもらったのです。やはり専門家だけあってスムーズな作業でした」と杉山氏。これにより、専門的な部分は専門の業者にある程度任せ、社内では運用管理を行うという、IT全体を活用する際の切り分けの大切さを学んだのだ。