「鍵」を扱うセキュリティのプロ
日本ロックサービスは、1971年に起業した錠前の販売や施工などを扱う企業だ。同社のITへの取り組みは1998年前後から始まり、現在ではExchange Server 2007を中心に、Office SharePoint Server 2007などにより、メールやグループウェアの管理を行っている。
また、基幹業務においてもVisual Basicで開発されたシステムを用い、販売管理や売上管理だけでなく、Microsoft Windows CEをベースとしたハンディターミナルによる在庫管理など、積極的なITへの取り組みを続けており、企業全体の生産性向上を達成している。
同社の社員数は178名(2008年1月時点)で、社員の全員にクライアントPCが与えられ、Windows XP、Windows Vistaをベースに各人が業務を行うなど、現在の同社にとって、ITは無くてはならない存在となっている。
日本ロックサービス社内には、錠前として日本で最初に特許を取得した「覚眠器附き錠」が展示されている。歴史を感じさせる姿には人の財産や命を守る"鍵"を扱う日本ロックサービスの理念が詰まっている |
日本ロックサービスが所蔵している錠前のコレクション |
手作りから始まったITの導入
中小企業において、IT投資による効果を実感しているところは意外と少ない。せっかく導入をしても使われないシステムになっている、そういったケースが多いのも事実だ。しかし、日本ロックサービスでは独自のスタンスにより、ITを企業の文化として吸収することに成功している。
「私が入社した当時は、社内のパソコンはゼロという時代でした」と当時を振り返るのは、情報戦略室 次長の杉山智氏だ(以降、杉山氏)。そのころはオフコンの全盛時代。「基幹業務は東芝のオフコンTP40にて行っていました」と常務取締役の長田茂夫氏(以降、長田氏)も当時を振り返る。そしてある時、導入ベンダーである東芝から、エミュレータを組み込めば、パソコン上から基幹業務の管理が行えることを聞き、それがキッカケで、Windwos3.1の東芝のパソコンを1台購入したのだという。そして、「パソコンとExcelを使って、電卓などを使ってやっていた入力や計算といった作業をやってしまおうと思ったのです」と杉山氏は語る。
「会社内でも複数の人がパソコンに興味を持ち始めてくれて、『私にも教えて欲しい』と言ってくれる人が増え始めてから変化が始まったように思います。そうなると、加速するようにみんながパソコンを持ちたいと思うようになるのです」と杉山氏。
牽引力となるキーマンの存在
中小企業におけるパソコンへの取り組みは、誰かしらのキーマンが必要になるケースが多い。簡単に言えば「パソコンに詳しい人」だ。日本ロックサービスでも、とくに導入を強制したことはなく、こうした人物が牽引することで、パソコンの導入が進んでいく。
「それから徐々にパソコンが増えていったのですが、ちょうどデスクの各島に一台といった状況になってから、普及が始まったように思います」と長田氏。当初、パソコンの普及という観点からはそれほど勢いがなかった同社だが、設置される台数がある程度増えたとき、便利そうにパソコンを使う人を見て、各社員がその利便性を認知しはじめたのだという。