ブランディング3.0と2009年の広告業界
織田氏は、締めくくりを「ブランディング3.0」と題して、「ソーシャルメディアが誕生したことで、ブランドは消費者と共同で創っていくものになった。また、ソーシャルメディアは、新たなCRMとも言える」と説明した。従来のメディアとは異なる"ソーシャルメディア"を意識してのブランド構築が必要になるということだ。
2009年以降の広告業界については、「様々な指標ツールが出てくるだろう」と予測する。片方では、テレビだけで生活している人、片方ではモバイルやオンラインなどといったいくつもの環境をクロスして情報を得る人、すべてを串刺しにして分析可能な指標やそれを計測するツールが出て来なければならない。これまでのような、クリック率やコンバージョン率を見るような"ダイレクトレスポンス"ではなく、リーチ力、ブランド認知、フリクエンシーを計測するための新たな「デジタルメディア指標」が必要となると共に、実際に次から次へと登場するだろうと予測する。
その一つの例として、Microsoftが手掛ける「エンゲージメントマッピング(Engagement Mapping)」という手法が挙げられる。この手法では、広告表示回数や広告に対して利用者がとった行動を観察し分析する。広告がクリックされなかった場合でも、ユーザーは何かしらの影響を受け、最終的には購買に繋がるケースが想定されるわけで、そういった行動の全てを計測していこうというものらしい。
最後に織田氏は、「キャンペーンでは、Big Ideaではなく、たくさんのSmall Ideaを走らせることが大事である。トライ&エラーへの試みによって、そこから評価を受けたものをシリーズ化したり、ターゲットを拡げたりしながら工夫をし、大きな展開へと繋げて行けば、リスクの減少も可能となる」とまとめた。
マーケティング業界人が勉強会に殺到
今回のセミナーは、最先端の広告やテクノロジーに関心を寄せる関係者たちの勉強会「第2回 次世代広告夜会(次世代広告研究会主催)」と合わせて開催されたものだったのが、本勉強会も開催者のブログ「汐留通信」やFacebookなどSNSを中心にした告知のみで、あっという間に定員オーバーとなってしまったほどの盛況ぶり。筆者は初めて参加してみて、その内容の濃さと参加者の熱気に圧倒された。ここでは紹介しきれなかったが、パネルディスカッションや博報堂DYグループ iビジネスセンター・クリエイティブディレクター須田和博氏による事例紹介なども、ネット・テクノロジーを広告に利用する側からの話は大変興味深かった。それからマイクロソフト、ヤフー、グーグルなどは、やはり先手、先手の戦略や投資を行っているのだなと率直に感じた。
今後、広告に携わる人たちは、単に今あるネット・テクノロジーをどう広告やマーケティングに融合させていくかではなく、技術、テクニック、サービス形態などを勉強し、想像以上にとても複雑なクロスメディアやまったくとんでもない視点からも見ていかなければならない時代がくるのだろう。
内容が多彩で会社名やサービス名も国内では聞きなれない新しいものも多かっただろう。本文に登場のサービス、企業へのリンク一覧を下部の「関連記事」欄に掲載しておくので興味のある方は参考にしていただきたい。
同日に行われた第二回次世代広告夜会には、ad:techアジア・パシフィック責任者である、dmgワールドメディア社・バイスプレジデントポール・べクリー氏も登壇し、東京開催についての意気込みなどを語った。世界最先端のマーケティングキーマンが一同に集合する「ad:tech」を今後、要チェックだ |
「ad:tech TOKYO 2009」開催概要
日時:2009年9月2日(水)~3日(木) 会場:ザ・プリンスパークタワー東京(東京都港区) 参加費用:2日間で7万円 主催:dmg world media/ad:tech日本事務局 公式サイトはこちら