――これまで、ネット上の行動分析型サービスは、Amazon.comなどの一部の企業で提供されてきましたが、そういったところ以外でもそれが可能になると?
我々の機器を用いてそうしたサービスを実現しようとする方々と、今出てきたようなすでにサービスを提供している企業の決定的な違いは、最終的にサーバを持っているか否かです。サーバ上では、ユーザーがログインしてくれますし、さまざまなキーワードを打ち込んでくれますから、それを収集して分析することで、行動分析ができました。
我々の製品に注目していただいているISPなどのカスタマは、そういったサービスは自分達の手元にあり、かつそれを利用してくれるユーザーも手元にあるが、その間のやり取りを仲介している、と言った存在です。その方々が、価値のある情報を中身も見ずに素通しするのではなくて、サーバを持つ企業と同じような行動分析サービスを提供しようとするにはDPIの技術が必要となるわけです。
ISPなども検索エンジンやEコマース、SNSなどのサービスを提供しています。しかし、そのサービスを中心に提供している専門サイトの方にユーザーの多くは流れているのが現状です。情報は目の前にあるのに、それには触れることができずに、専門ユーザーだけが収益を上げることができるという構造に対し、アクセスを提供している立場として何かできることがないか、と模索しているのが、我々の機器の使用者と言えますし、そうした企業の手助けをしていければと思っています。
――仮に導入が進んだとして、そう簡単にはサービスを開始することが可能なのでしょうか
問題として課金体系をどうして行くか、という問題があります。インターネットの接続は、すでに定額制が当たり前となり、その金額をどれだけ下げるか、という競争になっており、接続業者としては体力を消耗するばかりの状況となっています。
かつてのメールのやり取りと、テキスト中心のサイトを閲覧する、というだけならそれでも良かったと思います。しかし、現在は動画視聴も当たり前になってきましたし、さまざまな議論がありますがP2Pの有効活用なども考えられます。そういった意味で、インターネット上でやり取りされるトラフィックの種類も量も変わってきました。こうしたアプリケーションを使用するユーザーを満足させるためには、必然、設備投資が求められることとなりますが、低額の定額制では、設備投資を正当化できるだけの収益が上げられなくなりつつあります。
これまでは定額制の方向に進んできましたが、今後は、例えば動画を視聴したユーザーに対しては、1カ月に何MBもしくは何GBの動画を見た場合、この金額です、といったような方法や、何MBまでは定額だが、それを超えた場合は使用した量に応じて金額が変わっていくといったような定額と従量課金の両方を組み合わせた課金体系が出てくる可能性もあります。
あるいは、テキストのメールしかやり取りしない人と、動画を大量に視聴する人やP2Pを使用する人が同じ課金体系で良いのか、といった議論が出てきていますが、そうした問題に対して公平な課金体系を構築するには、例えば動画に何MB、メールに何MB、P2Pに何MBといったように何にどれくらい使用したかをDPIで分ける必要があります。
今まではユーザーが何をやろうが、ISPなどでは一律で1カ月や1日で流した総容量がどれくらいか、といったことしか提示しませんでした。これでは、ユーザーとしても納得できません。やはり、細かく、何にどれくらい使用したかが分かったほうが納得できるはずです。
こうした今までやってこなかった取り組みを、より高速化するネットワーク上で実現するには、専用のアプライアンスが必要であり、それが当社が以前から提唱してきたことでもあります。