――というと、日本やアジアでは政府関連の導入ではなく、他のところでの導入が進んでいると?

日本やアジアでは、通信キャリアやISPなどでの導入が中心になっています。この背景には、ブロードバンドの加入者数も頭打ちになりつつありますし、携帯電話の加入者数もほぼ頭打ちとなり、こうした事業者として、次の収益源をどこに求めるのか、という問題があります。

以前、セキュリティを高めるために用いるという話をさせていただいていますが、2008年後半に入り、DPIにより、ユーザーの流しているデータを調べることができるのであれば、それを付加サービスとして提供したいとの考えが出てきました。

これまでISPの接続会社では、自分達の末端にユーザーがおり、それがまたネットワークの先にある別のサービスに接続し、お金を払っていたのをただ眺めていただけでした。

DPIにより、ISPなどは、自分達の目の前を流れているデータが付加情報のあるものだということを理解できるようになり、それを上手く活用したいと思い始めたということです。

1つ、例として挙げられるのは、まだ具体的なサービス案件として実現していませんが、「行動分析型」というものが考えられています。

携帯電話のユーザーであれ、固定回線のブロードバンドユーザーであれ、なんとなくその人の使用傾向というものは出てきてしまうものです。例えば、車が好きな人は車関連のサイトを多く見るといったように。

そうした情報を、ISPなどはただ運ぶだけではなく、ある程度匿名性を保った形で、蓄積しながら、広告として企業に提供するなどのビジネスができないか、といった話をさせていただいています。

――そのビジネスモデルだと、情報提供者の匿名性などには問題が発生しないのでしょうか?

このビジネスの難しいところは、通信の情報を覗くという点にあります。元々、当社の製品は家庭でのフィルタリングを実現する、社内外への重要な情報の通信などを監視するといったセキュアな技術を提供するためのシステムです。

そうしたサービスを受ける前に契約として、こういったことに使用します、セキュリティとしてはこうなりますと提示することで、ユーザーに納得してもらい、そうしたサービスを提供していけるようなビジネスモデルが今後検討されていくと思っています。

我々の機器の役割としては、"パケットの中身を検査する"、ということなので、それが最終的にセキュリティに使用するか、マーケティングの材料に使用するか、といった違いなだけで、基本的な提供する技術の部分に違いはありません。

ただ、1つだけ言えるのは、システムの作りこみにより、その両方への使い道を生み出すことが可能であり、これからのISPなどの新しい収益源としてDPIが活用されていくということは間違いありません。