今年1月、Sun MicrosystemsによってMySQLの買収が発表され、オープンソース業界およびエンタープライズアプリケーション市場を騒然とさせた。あれから7カ月が経過し、Sunを中心とした大手ベンダどうしの協業によってMySQLの価値をさらに向上させる環境が整いつつあるようだ。国内で「MySQL Enterprise for i5/OS」の日本語サポート窓口を務めるイグアスは3日、MySQL Enterpriseビジネスパートナー向けの発表会を開催し、主にIBM iとMySQLの連携という観点からMySQLの持つ可能性や今後の展開についての紹介を行った。
日本IBM パワー事業部・製品企画 安井賢克氏 |
まず最初に、日本IBM パワー事業部・製品企画 安井賢克氏より、IBMの提供するSystem iシリーズにおけるオープンソースへの取り組みや、その中でのMySQLの位置付けについて説明された。同氏はSystem iの進化を語る上で重要なポイントとして、とくに「仮想化におけるマルチOSサポート」と「テクノロジーのオープン化」の2点を挙げている。
仮想化については、POWER Hypervisorによって1つのハードウェア上に複数のOSが搭載できるようになったほか、IBM iだけでなくLinuxやAIXなどといった多種類のOSがサポートされるようになった。また、iSCSI HSLを組み合わせることでWindows OSやIntel Linuxとも連携することが可能となり、OSを選ばないインフラ環境を構築することが可能になっている。
オープン化については、ソフトウェアとハードウェアの両側面から考えることができると同氏は言う。まず管理ツールについて、従来は専用のツールを用いて管理する必要があったが、現在はWebブラウザからのアクセスでシステムを操作することが可能だ。一方でハードウェアについては、オープンなテクノロジーであるPOWERプロセッサを採用し、大容量の外付けディスクとしてDS8000のサポートを強化している。また、現在はそれに加えてブレードのサポートに対する取り組みを進めている最中だという。
このようにさまざまなテクノロジーがオープン化されていく中で、IBMのシステムの価値を世間に遡及するためのアイデンティティとなるものは何か。それはOSだと安井氏は指摘する。
そのOSの価値を高めるために、同社ではオープン化と合わせてオープンソース環境のサポートを積極的に進めてきた。まずIBM i上にAIXアプリケーション実行環境を用意し、LAMPスタックを中心としたオープンソースアプリケーションが動作する環境を整える。まずApache、PHPのサポートが追加され、そして昨年夏にMySQLのサポートが追加された。
この統合環境によって、Web分野に強いオープンソースアプリケーションと旧来のレガシーアプリケーションの連携が可能になり、IBM iのサポートする業務範囲が大きく拡大したという。MySQLのサポートは、当然ながらSunによるMySQLの統合後も従来通り続けられており、すでにそれは次の段階に移ろうとしている。
次の段階とは、MySQLとDB2/400との統合だ。現在のシステム構成では、MySQLとDB2/400は独立してデータを管理している。したがってMySQL向けのコードとレガシー向けのコードはそれぞれ別に作成しなければならない。とくに既存のPHPアプリケーションはほとんどがMySQL向けに作られているため、DB2/400にアクセスするには結局新しくコードを書き直す必要がある。
そこで、DB2/400をMySQLのデータストアとして利用できるようにすることにより、MySQLを利用するアプリケーションでも、実際のデータはDB2/400側で管理するといったことを可能にしようというのが次の試みである。この機能は、今後日本でのベータテストを経た上で、近い将来リリースされるとのことだ。
「IBMでは、オープン化を勧める中でオープンソース・ソフトウェアのサポートも強化してきた。今後もさらにそれを加速させていく」(安井氏)