また、セッション1のマルチコアチップのセッションでは、3Leaf Systemsという新興の会社が、10Gb EthernetやInfiniBand経由で接続されたノード間をccNUMA結合して単一アドレスのメモリ空間を実現するチップを発表した。Silicon Graphics社のccNUMAサーバもあまり勢いが無い現状で、商業的には難しそうな気もするが、技術的には面白い発表であった。
そしてセッション2のVideo and Mediaのセッションでは、東芝のSpursEngine、そしてNXPとAMDのメディアプロセサの論文が発表された。いずれも60fpsのソース画像を120fpsに変換して表示品質を改善したり、トランスコーディングで画像フォーマットを変換する機能をもったチップである。このような高度な演算機能をもつチップが一般的な家電の中に入っていくというのは、やはり、凄いことである。一方、TVやビデオのブラックボックス化の進展は恐るべきもので、トランスコーディングなどは、一般の人はもとより、コンピュータの専門化でも画像分野をやっていなければ仕組みは理解できない。
また、SpursEngineの用途の一つとして紹介されたSuper Resolution(超解像)技術は、単なる補間ではなく、画像の性質を利用して補間を行うことにより解像度の高い映像を作り出す技術であり、ディジタル画像処理技術の粋とも言える。しかし、最近では筆者は、そんな御託(ゴタク)とは関係なく、絵を見てキレイと思ってもらうというだけの、ユーザから見て透明で意識させないという、昔の剣豪の境地ような技術が最高の技術ではないかと思う。
セッション3のMobile Media Processingのセッションでは、Audienceという会社が音声処理プロセサの論文を発表した。今更、音声処理と思われるかも知れないが、Audienceのプロセサは人間の聴覚を真似たアーキテクチャをとっており、2つのマイクから拾った音を処理して聞きたいスペクトラムを残し、ノイズのスペクトラムを除去する。雑音の多い環境での携帯電話の音声処理をデモしていたが、かなり、聞き取りやすい感じであった。
日本では、富士通のらくらくフォンではっきりボイスという類似の機能を実現しているが、AudienceのチップはSHARPの705iIIやLGのCyonで採用されており、今後、もっと多くの携帯電話で採用予定という。2.7mm×3.5mmという米粒より一回り大きいくらいのチップで、このようなことができるというのは、素晴らしいことである。