ザ・ボディショップの全国170店舗には、それぞれ店舗運営を任された店舗マネージャがおり、店舗マネージャとの業務連絡は、各エリアを統括する本部の約20名のショップ・アドバイザーがメールやFAXを中心に行うという体制になっていた。

たとえば、営業本部やマーケティング本部、物流本部、経理本部といった各本部から出される「商品アンケート調査の実施依頼」「DV根絶キャンペーンの実施スケジュールの確認依頼」といった指示や通達は、ショップ・アドバイザーのもとにいったんまとめられ、各店舗へと届けられる。店舗マネージャは、バックヤードに置かれたPC上でメールの到着を確認し、閲覧の確認、進捗の報告をメールで返信したり、FAXでアンケート結果を送ったりするわけだ。返信がない場合は、ショップ・アドバイザーは1件1件の店舗に直接電話をかけ、確認をとっていた。

こうした仕組みは、店舗をチェーン展開を行う小売業では一般的なものではあるが、事業が拡大し、やりとりされる情報量が増えるのにしたがって、処理はより煩雑になるものだ。同社では、各本部からの連絡をできるだけまとめて週1回定期的に配信する体制へと移行させたが、1通あたりにさまざまな情報が盛り込まれたりしたことで、かえって閲覧されにくくなったり、定期配信から漏れた情報が不定期に配信されることで、その多くが見過ごされることになったという。また、カスタムシステム化も試みたが、常に変化するビジネスの実態にあわせて、システムを見直し、運用していくことは困難をきわめた。

新妻氏は、その難しさについて、「店舗運営のノウハウは、コミュニケーションの様式にも現れるもの。単に現状をそのまま写し取ったり、複雑なものをシンプルな仕組みに落とし込めば済むという話ではない。実情に合わせて運用するという意味では、メールというツールに頼らざるをえなかった」と語る。

イオンフォレストのIT部門は、新妻氏を筆頭とした4名という少人数構成だが、ITのビジネスへの活用という点では先進的だ。基幹システムの上流設計はもとより、物流インフラの企画構築、コミュニケーション基盤の整備、ヒジネスインテリジェンスによる販売データの分析、映像配信インフラ整備などまで手がける。しかし、コミュニケーション分野の改善は難しいという判断をせさざるをえなかったわけだ。店舗コミュニケーションの方法とそのノウハウをシステムとして運用していく難しさは、多くのチェーンストアが抱える悩みであるとも言えよう。