一方、Dell CEOは自らの経営手法についても言及。「創業当初は課題というものを考えたことがなかったが、企業は常に課題を持っている。作ったものを壊したり、いくらやっても競争力がつかないというものもある。経営者は、成功したとしても、常に心配のなかにあり、悩みがある。失敗することも怖い。そして、失敗したことを引きずらないようにしてなくはいけない。将来を考えれば不安ばかり」などと本心を吐露した。
創業期の自分に対して、いまアドバイスをするとしたらどんなことか、との質問に対しては、「なんという質問だ」と会場を沸かせたあと、「初期においては過分な資本が提供されていた。他の企業に比べると効率的な運用をしていたと言えるが、今ならばさらに高い資本効率性を実現できるといえる。また、人材開発を怠ってきた反省がある。人材育成への取り組みが厳密ではなかったといえ、将来の成長に向けた人材育成をしておけばよかったと感じる」などと、普段の講演では聞けないような本心も漏らした。
だが、「創業時からいまに至るまで、決して余力があったわけではなく、仮に人材育成に時間を割いた分、ほかのことが疎かになり、いまの成長が実現できなかったかもしれない。その点では決して悩むものではない」と、Michael Dell氏ならではの考え方も披露した。
また、"Michael Dell流"の意思決定のプロセスについては、「ある製品開発リーダーは新製品の開発意思決定は水曜日にしかしないという例があった。毎日、あれをやりたい、これをやりたいと言うとキリがなく、意思決定ができないのが理由」と笑い話をしたあと、「この業界においては、5カ年計画はうまくいかない。業界の進歩が速すぎるので3カ年が最適だ」とし、「いま、Dellでは、中期計画を策定し、エンタープライズ、中小企業、コンシューマ、ノートブック、新興市場の5つにフォーカスしている。これを決定するのに80項目ものアイデアを出し、そこから絞り込んだ。どうやって絞り込んだのか。それは、後回しができない取り組み、数年後に向けて、いまやらなければならない取り組み、競合他社にどんなインパクトを与えるのかといった観点からプライオリティをつけて絞り込んだ。これを毎年、プライオリティを見直して、正しいことに取り組み続けているかということを検証することも大切だ」などと述べた。Dell流の経営手法の一端を披露した格好だともいえよう。
そのほか、日本での製品戦略は全世界における製品戦略とは異なるのか、という質問に対しては、「Dellは創業以来、米国市場に向けに開発したものを全世界規模で出荷し、成長してきた。だが、なかには顧客に受け入れられない市場もあり、米国で開発したものと、その市場で求められているものに大きな乖離があるといったケースもあった。日本は、サブノートの形状に高い関心が持つ市場であり、一体型PCにも関心を持っている。デDellにとって、日本は重要な市場であり、その市場に最適化した製品の投入に取り組んだ。それがXPSoneである。日本の顧客の要望を聞かなければ生まれてこなかった優れた製品である。だが、Dellにとっては日本は重要な市場だが、唯一の市場ではない。そのため、XPSoneを全世界に展開していく必要がある。日本の市場は、トレンド、形状、素材という点で、一歩先を行く市場であり、日本の市場にフォーカスしていくことは大切なこと」とした。