モバイルについても、O'Reilly氏は最初に誤解を指摘することから始めた。「モバイルとは何か?」と聞かれると、多くの人が「携帯電話」を連想するだろう。だがモバイルの主役はデバイスではなく、われわれの行動なのだと同氏は言う。クラウドによって、1台のデバイスにしばられず、場所を問わずに様々なデバイスから自分のデータにアクセスし、同じようにソフトウエアを使えるようになろうとしている。その利用範囲の広がりに、モバイル市場が拡大するチャンスがあるという。一例として、メンバーが車で走行している道路の混雑状態を集計して、リアルタイムの道路情報データを提供する「TruTraffic」を挙げた。Microsoftのナビゲーション技術「Clearflow」もボランティアからのGPSデータを活用している。また地震探知のQuake-Catcher Network(QCN)はノートPCのモーションセンサーのデータを収集している。
今日の集合知の大部分は、われわれがパソコンに向かいキーボードをタイプして入力しているデータである。ところがWi-Fiでデバイスを利用している場所が特定できたり、ノートPCやスマートフォンにモーションセンサーが導入されたりと、われわれの行動がデータ化される機会が増えている。新たなセンサーの利用により、ユーザーの行動が集合知のデータ入力になる。「パーソナル・コンピューティングはアンビエント・コンピューティングに移っていく」というのがO'Reilly氏のモバイル論である。