作品を通じたコミュニケーションをおそれずに

――作り手にとっても気軽に参加できるオンライン部門の開設は喜ばしいことだろう。ネット発の新たな才能の登場。それについて話を振ってみる。

「そうですね。僕は"父と息子もの"に弱いんですけど、そうじゃないシュールなものとか、テクニカルなものに挑戦しているのも好きなんですよ。今は当たり前にある手法ですが『メメント』のように、ストーリーを結末から見せたり、『ブレアウィッチ・プロジェクト』のような"モキュメンタリー(フェイク・ドキュメンタリー)"だったり。そういったユニークな見せ方は最初はショートフィルムが始まりでした。

今回はネットのおかげでこれまでとは違った人も参加してくれると思うので、こうした実験的な作品の登場に期待してます。ぜひ恐れず、ぶつけてきて欲しい。自分らしさを見つけるには人と話すとか、表現して、酷評でもいいから意見を交換しないと成長しないじゃないですか。そういうふうにコミュニケーションを積み重ねられるのもネットのいいところですし」

――ウェブ上で皆が投票できること。わかちあえることも今回のオンライン部門の醍醐味という。自身は監督としてショートフィルムを提供することに興味はないのだろうか、聞いてみる。

「僕ですか、自分がなにを表現したいのか、書きとめている段階ですね。自分が押したいものが、見つかったら撮ってみたい。海外ではキルスティン・ダンストやイーサン・ホークなど沢山の俳優がショートフィルムの監督しています。ようやく日本でも、自分の立場を大切にしつつ、誰でも表現できる環境ができつつある。なんだこんなのかよ、と言われるかもしれないですけど(笑)。それを含めて、頑張りたいですね」

――フェスティバルの今後にも期待したいところだ。別所の夢はまだまだ続く。

「ショートフィルムの映像作家に1億円プレーヤーが生まれてくるようにこれからも応援しつづけますよ。短編の楽しさが伝えられる人、もっと長編と短編を自由に行き来できる人が映画祭から誕生したら嬉しいですね。短編映画って、スナックサイズムービーとか、ジュエリーサイズムービーって言われるんですが、本当に宝石のようにキラキラしているものなので、皆に触れてもらいたい。10年経って年に一度のお祭りの映画祭があり、ネットで意見や投票ができるサイトがあり、大きなスクリーンで特別な気持で鑑賞できる環境ができた。それがうまく循環していけばいいな、と考えてます」

別所哲也(べっしょ てつや)
1965年生まれ 静岡県出身 慶應義塾大学法学部卒
1990年、ハリウッド作品「クライシス2050」で映画デビュー。その後、数多くの映画・テレビ・舞台などで幅広く活躍。2008年7月より、東京・帝国劇場にてミュージカル「ミス・サイゴン」に主演。1999年より、日本発の短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰。2004年には米国アカデミー賞公認映画祭に認定され、今年で10周年を迎える。
別所哲也 オフィシャルサイト