短編映画専用の映画館をプロデュース
――そうして映画祭が誕生して10年。節目となる今回は大きな目玉企画も動く。まずひとつ目は今回の取材場所となった「ブリリア ショートショート シアター」だ。別所自らがプロデュースした日本初となるショートフィルム専門の映画祭連動シアターである。
「クリエイターが作った映画を格好良く見せられる空間、いらっしゃるお客様がラウンジ感覚で過ごせる、心地いい空間。そんな空間にしたかった。こだわった部分はいろいろあるけど、特にと言われたら赤い色調。レッドカーペットだったり、映画の華やかな部分に付き物ですよね。気持を明るくしたり、自分のなかのクリエイティブな炎を燃やす、素敵な色なので。自分がそうだったんですが、最初に一歩踏み出すことって一人では怖かったり、仲間が欲しかったりするじゃないですか。だからクリエイターへ、映画が好きな人へ、人の体温が伝わってくる場所を提供したかったんです」
「MSNビデオアワード」でクリエイターの裾野を広げる
――人と人とが繋がる。感動を共感し、笑いたい。自身が俳優という職業を選んだのも、それが理由だったという別所氏。今回はそれを後押しするものがもうひとつ用意される。映画祭第一回目からパートナーシップを結んでいたマイクロソフト、MSNの協力によって新設されたオンライン部門「MSNビデオアワード」だ。
「MSNビデオアワード」のサイトにて、5月6日(火)まで作品を募集中 |
「映画祭が誕生した99年からハリウッドやシリコンバレー系の人たちが、いずれはネットで映画やテレビが楽しめると言っていたのは耳に入ってきていた。僕らも概念的には理解していたけど、当時は"ピーヒョロヒョロヒョロ"でネットに繋がっていた時期で、まだ実感はできなかった。でも、いつかそういう日は来るだろうな、この映画祭もサイバースペースで世界の人と繋がる、そうなったらいいな、とずっと思っていたんです。インタラクティブに、それをコミュニケーションツールとして使えたらいいなって。
実際、ショートフィルム自体がネットとフレンドリーなコンテンツですよね。時間の尺が手ごろで多様な楽しみ方ができる。5周年を迎えたあたりからオンライン部門を作りたい、とあちこちで言っていたら、ここ最近でネットの動画がわーっと盛り上がって。そこへほら、映画祭の協賛企業だったマイクロソフトさんが動画投稿サービス『Soapbox』と作ってくれたので」
――オンライン部門設立は長年の悲願だった。別所はそう語る。
「パソコンがあって、アイデアがあって、カメラが、極端な話、ケータイのカメラでも、自分のメッセージが伝えられる。今の時代は素晴らしい環境だと思うんですよね。国籍や場所を越えて、素材提供するだけでも参加できる。例えばサッカーはJリーグがあって、高校や少年サッカーがあって、いろいろな形でサッカーを楽しむ人がいる。観る人もいる。それに伴うビジネスもある。映像もようやく興行配給のスタイルだけではなく、そうした形になったことで裾野が広がる。裾野が広がるというのはキープレイヤーが揃うということです」
――現在のネット社会はショートフィルムにとって追い風。それにより認知度が高まることを期待しているという。
「とにかくたくさん見ていただいて、自分の心を奪うのを探してもらいたいですね。ワインテイストと一緒で、ショートフィルムは短いですから、比較しながら楽しめる。劇場で鑑賞するのは会席料理のような雰囲気ですがネットなら臨機応変にできる。ある映画を観て、次は違う映画を観たから、それが有機的に繋がって、自分の中で面白い感覚が芽生えることもあるかもしれない。編成権が自由になることで、そういう新しい楽しさも生まれるんじゃないかな」