周りのIT環境を見渡してみればわかるように、企業内には本当に多種多様のファイルサーバが乱立している。使用率にばらつきが生じるのは避けられないこととはいえ、ほとんど使われていないサーバやストレージも多い。つまりその分、ディスクに無駄が生じる。「平均して企業内データの約70%は作成後、更新やアクセスがないコンテンツ」(EMCジャパン グローバルサービス統括本部 テクノロジー・インプリメンテーション・サービス本部 テクノロジー・コンサルタント 高野路子氏)であるならば、なんとか利用状況にあった容量管理をインテリジェントに行うことはできないだろうか。

Rainfinityは7つのアプリケーションで構成されている。各アプリケーションがどういう働きをするか、以下の例で見てみよう(話をわかりやすくするため、かなり極端に単純化している)。

「abcd.pdf」というファイルがネットワーク上のファイルサーバ「win1」上に存在するとする。このファイルはアクセス頻度は低いが、完全にアーカイブ化するほど参照されないわけではない。つまり、セカンダリストレージ「emc1」に移動させたほうが効率的である。だが、あるユーザが「abcd.pdf」にアクセスしたいとき、物理サーバをいちいち調べて指定しなければならないのは面倒である。だいたい、ユーザはこのファイルが移動したことすら知らないのだ。このファイルは「\dfs2\Mycom\MJ\abcd.pdf」でアクセスできたのだから、今後も同じマウントポイントでなければ困るのである。たとえ、実体がどの物理サーバ上にあろうとも。

まず、ストレージ管理者は「Tiered Storage Management」で「abcd.pdf」のようなアクセス頻度の低いデータを特定、「emc1」のような2次ストレージ(ニアラインストレージ)に移動させる。このとき、移動中の「abcd.pdf」にアクセスを試みるユーザがいるかもしれないが、「Migration and Consolidation」が透過的な移動を実現するので、ユーザは何も気にすることなくファイルにアクセスできる。

Tiered Storage Management画面。各データを適切なストレージ階層に配置するためのアクセス解析を行える

また、「win1」から「emc1」に移動後も、ユーザは以前と同じ「\dfs2\Mycom\MJ\abcd.pdf」から参照できる。これは「Global Namespace Management」により、グロバールネームスペースによる論理的なファイル管理が可能になっているからである。マウントポイントの再構成も必要ない。複数のファイルサーバ/ファイルシステムが存在する異機種混在環境にあっても、あたかも1つのファイルシステムのように管理できる。

別の例で考えてみよう。企業の中には「5年以上、誰からもアクセスされていないデータ」「1GB以上のデータ」「10年以上前のデータ」などは、ひとまとめにアーカイブ化させたいというところも多い。そういった企業(あるいは部署)ごとのポリシーに基づいて、自動的に静的ファイルを識別し、バックアップ/リカバリの負荷を減らすのが「File Management」である。これにより、古いデータであっても定期的にフルバックアップしなければならないような状態から解放される。

File Management画面。アーカイブ化するデータを閾値(ルール)によって設定できる。これにより自動的に該当データがアーカイブ化され、オンラインストレージに保存するデータ量を調整でき、バックアップの負荷を低減させることが可能になる

そのほか、管理者がユーザのストレージ利用状況を把握し、容量の問題を特定するための「Capacity Management」、ミッションクリティカルなデータを保護するため、ディレクトリごと別の場所に同期的に複製する「Synchronous IP Replication」、パフォーマンスのボトルネックやホットスポットを特定する「Perfomance Mangaement」がある。

ストレージの利用状況を把握できるCapacity Management

ボトルネックを特定できるPerfomance Management