社内SNSで一番怖い"誹謗中傷"

後半のディスカッションでは、上記4名に加えて、日本電信電話 研究企画部門 池内哲之氏、富士通総研 経済研究所 主任研究員 浜屋敏氏、サイボウズ intra BLOG/SNS Users Group事務局 丹野瑞紀氏が加わって、日ごろWGでされているディスカッションが再現された。

社内SNSで恐れられることのひとつ、誹謗中傷問題については、さまざまな意見が出た。福岡氏は、「NECの場合、会社の制度や経営などに対する誹謗中傷もよく出るが、悪い点を改善しようと取れるかどうかだと思います。当社では削除しない方針です。裏で(書いた本人に)直接『そういうことを言われると困るんだよね』と言うことはありますが」と語る。

一方、「NTTのSNS『知恵の輪』はハンドルネーム性であり、本名とは関係ない名前のことが多い。荒れると、他のユーザーはその書き込みを早く見えなくしてしまおうと他の投稿をします。2ちゃんねるのsageみたいなもの。相手にするとかえって炎上しかねません。この場をいいと評価する人が自発的に火消しに回ります」(池内氏)という。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの場合、同社のSNSは匿名性であるため、荒れることはあるとした。「あまり良い質問ではないとレスがつかなかったり、『同じ質問を繰り返すな』と書かれて雰囲気が悪化することはあります。ただ、顧客に対する機密、戦略上の機密はファシリテータが消す場合があると明言しており、それにより規制はしています。荒れることは荒れますが、自然に収束していきます。また、荒れてもファシリテータは消しませんし、トップに注意されても消しません」(戸上氏)。

とにかく見てもらう環境を作ること

戸上氏は、社員にSNSを使ってもらう仕組みについて、「病院で説明をする際に必要なツールは予約が要るので、誰がどこで使っているかが分かる必要があるのですが、その一覧をSNSポータル内に作りました。業務で必要なことをポータル内に集めたので、必然的にみんなが毎日ログインするようになりました。

中間管理職は見なかったため、日報の分析システムを入れ、部下が自分の指図に従ってプロダクトを売っているかどうかを見られるようにしたので、やはりログインするようになりました。

ログインすれば他のものも見るようになります。とにかく見る環境を作ることです。ログインして賑わっているとますます見られるようになり、更に賑わうようになります。結果的に全営業マンに使ってもらえるまでになりました」と活用のポイントを語った。

池内氏は、「知恵の輪」活動の経験から、「サイトの立ち上げはボトムアップだったがトップも認めてくれて広がった」とし、「ボトムアップから途中からトップダウンに切り替わるという流れがうまくいく秘訣かも知れない」とまとめた。

EGMが目指す"成功する社内SNS"とは

企業の垣根を越えてオープンイノベーションへ

WGで考える今後の課題についても言及された。「ブログを書いている暇があったら仕事しろ」「他の部門に相談する際には上司を通せ」と言い出す中間管理職、大事な情報は自分のためだけに使うので「非公開」とする悪しき成果主義、部門ごとの局所最適化や短期的利益優先を考えるSBU (Strategic Business Unit)制度、上司が評価していたのがネット上で衆人が評価となることによる人事/業績評価制度の問題、リアルでのプレゼンスとネット上でのプレゼンスによる問題、経営陣の覚悟、などだ。福岡氏らは、今後、それらの課題についてクリアしていく必要性があるとした。

同氏は、「NECと日立はグループでSNSを利用しており、企業の壁をまず越えている。グループに広げるのはかなり大変なことだが、意義のあること。EGMが企業内を変えたら、次は企業間。企業の垣根を越えて、真のオープンイノベーションを創出する場に」と今後の展望を語った。