「赤壁」や「Audition」の名称争奪戦で問題顕在化

ところで、中国のオンラインゲーム企業を巡っては、前述のように多くの知財紛争が起きているが、一様にその解決は困難を極めた。その理由は、所轄行政機関同士の、いわゆる縦割り行政の在り方に原因があるものもあった。

いくつか例を挙げると、オンラインゲーム大手の天暢科技と完美時空が「赤壁」の名称を奪い合った例や、第九城市と久遊網が「Audition」の権利を奪い合った例などに、その問題が現れている。では、中国のオンラインゲームの関係所轄官庁は、どのようなものがあり、それぞれどのような役割を担っているのだろうか。

まず国家商標局だが、同局はゲームの商標申請を受理している。冒頭で挙げた国家新聞出版総署は、オンラインゲームが電子出版物のカテゴリーに属するため、サービスを始めるには同署の批准を得なければならない。

文化部は、オンラインゲームに対する審査を行うのだが、実際の審査内容は国家新聞出版総署とほとんど変わらないのが現状だ。前述の「赤壁」についても、これは天暢科技と完美時空の自主的に研究開発した国産ゲームなので、文化部としても、よほど敏感な問題でもない限り許可しない理由はない。

つまり、オンラインゲームの審査は早い者勝ちで、「Audition」の権利争奪問題についても、文化部が第九城市と久遊網のどちらに早く許可を出すかが重要となっている。だが、法律に具体的な規定がないため、果たしてどちらがAuditionの名称を正当に使えるのか、客観的には結論を出しにくい。

つまり、オンラインゲームには3つの行政機関が関わっており、縦割り行政がもたらす弊害とともに、オンラインゲームに関する法律や法規が整備されていないことも、知財トラブルが頻発する大きな原因となっているのだ。