技術を見抜けない日本企業

このような技術を採用する企業を見ていると、日本企業がもっている問題点が見えてくると大見教授は語る。日本企業には、新技術を評価し使用するという姿勢がないのだという。せっかく技術を開発しても、真っ先に評価してくれるのは海外企業だというもどかしさを次のように述べる。

「なかなか日本の企業は新技術を使わないですね。ある技術を(海外企業より)1年半も前に持ちかけたんだけど、結局は使われなかった。それでIntelに持ちかけたら、すぐに入れてくれました。技術を開発しても、日本の企業には技術の価値を見抜いて評価することができない。アメリカで採用されてはじめて日本で評価されるんです。でも、そうすると(日本の国家予算を使って、海外企業を支援する形になってしまうので)国賊みたいになっちゃう。そこで、経済産業省に『日本で開発された技術を最初に採用した日本企業に、税制上の優遇を与えてくれ』と迫っているところです。」と残念そうに笑う。

最後に、連携している企業に対して次のような思いを熱っぽく語った。

「呼びかけに応えて一生懸命やってくれている日本の企業はすごいと思いますよ。よくぞそこまでというような開発を行っています。25年かかってようやく技術が完成したときなどは、本当に涙が出ました。」

『産学連携』あるいは『産学官連携』と一口に言ってもさまざまな形があり、成功のための方法が確立されているわけではない。しかし、「この技術は必ず必要になる」という強い確信と、「この技術で世界一になる」という強い意志、さらにはその技術を評価し導入すること。この3つが『産学連携』を成功させるために必要な要素であることはまちがいない。

(取材協力:埼玉県産学官交流プラザ)