サーフェスとタンジブルは今、まったく新しい革新的な出来事のように注目されているが、約20年という長い時間の改良・洗練を経てきたアイディアである。

「技術開発は、ロケットのようでありながら、同時に氷河のようでもある」とBuxton氏。その矛盾が理想的な状況を生み出すのだという。スピード感のある小さな試行錯誤が繰り返され続け、それらがサーフェスとタンジブルのように長期にわたって育まれてきたアイディアが開花する時期に収束され、より大きなブレークに貢献する。このようなアイディアの開花は以下のグラフのような形になるため、同氏は"ロングノーズ"と呼んでいる。

発明時には理解を得られなくても、ユニークな視点が正しければ改良・洗練を経て、アイディア群の開花を生み出すという"ロングノーズ"

もちろん視点を変えた全てのアイディアがロングノーズ上にあるとは限らない。研究者や開発者がロングノーズを意識して、アイディアやビジョンをより明確に共有するようにしても、「おそらく自分たちがロングノーズ上にあるという確信は得られないだろう」という。誰にも未来は分からないのだ。それでも自分のアイディアに自信が持てなくなった時に、「ロングノーズの歴史が存在するのを知っていてほしい」というのが、Buxton氏が講演の最後にISSCC参加者に贈ったメッセージだった。