1月23日、日本への本格上陸を果たした"中国最強"の検索エンジンサイト「百度」。百度を率いる董事長兼CEOの李彦宏氏は、「2012年までに世界で最も競争力のある検索エンジンになる」という高い目標を掲げている。一方、その"仮想敵"ともいえるGoogleも、百度の本拠地である中国攻略を進めるため、経験豊かな李開復氏をGoogle中国の総裁とし、切り崩しを図っている。検索エンジン世界一をかけた"2人の李氏"の戦いの行方はいかに?

百度とGoogleの2強構造はますます顕著に

中国のIT業界の調査研究を行っている艾瑞諮詢集団(iResearch)がこのほど発表した2007年第3四半期の中国検索エンジン業界に関する研究報告書である「2007年第三季度中国捜索引※1研究報告」によれば、2007年第3四半期における中国検索エンジンの市場規模は、すでに8億 1,800万元(約123億円)にも達している。前四半期期に比べ27.6%もの増加であり、一昨年の同四半期に比べれば、2倍以上になっている。

※1は、敬の下に「手」

同報告書によれば、中国検索エンジン市場におけるシェアは、百度が60.8%、Google中国(谷歌)が23.8%、中国Yahoo! (雅虎)が10.4%となっている。3社を合わせると95%となり、この3社が、同市場をほぼ独占していることが分かる。

さらに細かく言うなら、かつてNo.1の座にあった中国Yahoo!のシェアはすでに1割にまで下落しており、他の2社に比べてマイナーな存在になりつつある。従って、事実上、百度とGoogleの一騎打ちという構図になっているのが現状だ。

この2強を率いるのは、百度は董事長(会長)兼CEOの李彦宏 (Robin Li) 氏、Google中国は総裁の李開復 (Kai-Fu Lee) 氏で、中国検索エンジン業界の覇権を巡る両社の競合は、ここ2、3年の間、「2人の李氏の戦い」として注目されてきた。本レポートでは、2人の経歴や性格を明らかにすることで、この戦いの行方を占ってみたい。(以下では、李彦宏氏を「彦宏氏」、李開復氏を「開復氏」と記述する)

豪州のカンファレンスでGoogle創業者2人と出会う

中国で広く知られている話によれば、彦宏氏とGoogleとの最初の接点は、1998年夏にオーストラリアで行われた、インターネットに関するあるカンファレンスだった。当時、Infoseekで検索エンジンの研究開発を行っていた彦宏氏は、スタンフォード大学のコンピュータサイエンス専攻修士課程に在籍していたLarry Page氏、 Sergey Brin氏と出会った。2人は、彦宏氏に検索エンジンに関わる技術的問題について多くの質問をしたが、彦宏氏は自分が"虎の巻"としていることまで、余すところことなく答えたという。

Page氏と Brin氏は、当時検索エンジン技術の研究開発や情報収集を行いながら、起業することを考えていた。彦宏氏の回答は、両氏に事業を立ち上げる上での多くのヒントを与え、両氏の起業への道を一気に加速させた。

1998年秋、エンジェルからの投資を得た両氏はGoogleを設立、検索エンジンのβ版を発表した。彦宏氏はそのβ版を見るなり、同社の検索エンジン技術が、自ら考案したものと瓜二つであると認識したと伝えられている。

Googleに検索エンジン産業化の機先を制せられた彦宏氏は、"虎の巻"を教えてしまったことを深く後悔したたが、その一方で、自らが考案した検索エンジン技術の確かさや実用性に対し強い自信を持つようになり、起業への道にまい進するようになったという。