日本ではコンシューマ機器を中心に採用

実際のところ、日本において同社がどの程度のシェアを獲得しているかが気になるところだ。しかし組み込みOSに何を採用しているのか、公表されることは少なく、正確なデータはない。しかしながら、同社が日本でも多くのシェアを獲得していることは間違いない。

Artt氏によると、「世界市場と比較した場合、日本ではコンシューマ機器での採用が多いという特徴がある」という。デジタル家電といったプロダクトでの採用が多いということのようだ。日本市場に関しては同社の日本法人であるウインドリバーの代表取締役社長の藤吉実知和氏から説明があった。

藤吉氏は「組み込み業界はひとつの転換期にきている」と語る。デジタルTVやデジタルカメラのコードはすでに1千万行を超えており、printf()でデバッグする[注1]といった開発体勢には限界があるという。このような開発体勢を揶揄して「Mr. printf()」と呼ぶことも多いが、すでにMr. printf()も限界を迎える時代がやって来ているというわけだ。

同氏はこうした複雑な組み込み開発においては「幅広く活用できる便利な開発ツールが欠かせない」としており、VxWorksにもLinuxにも提供している同社の開発スイート「Workbench」のような製品が重要になるとしている。

注1

組み込み機器においては、標準のprintf()関数や標準出力が存在しない場合も多い。つまり、printf()でのデバッグが不可能なこともある。

「Use Wind River!」

Artt氏は本誌の読者へ「Use Wind River!」というメッセージを述べた。オープンソースのツールは使えるものも多いが、開発の効率の面で考えると改善の余地がある。先進的なプロダクトを開発するには、それに適用した優れた開発ツールが必要だ。この意味を込めて、一度「Workbench」を使ってみて欲しいというわけだ。

最近の組み込み開発では、OSを含むソフトウェアでデバイスの差別化を図るというケースも多く見られる。そして、マルチコアプロセッサの出現、デバイスの複雑化、少ない開発期間など、組み込み開発はより困難になってきている。Wind Riverのプラットフォームを採用し、コアコンピタンスにのみ注力するというのもひとつの選択肢となるだろう。