根底にある戦略は「顧客を支援する」こと

組み込みに特化した市場で、VxWorksとLinuxという2つのOSを扱うことの意味は何なのだろうか。

Artt氏によると、同社は「顧客を支援する」という青写真をベースにして「高信頼で、よりよりプロダクトを、より迅速に提供する」という戦略をとっている。これは開発から導入、運用、保守までを含んでいる。Wind Riverが組み込みOSとしてLinuxを扱っている理由もこの戦略に基いており、顧客に対して「Linux」というもう1つの選択肢を提供するためだ。つまり、ケースバイケースで適切なソリューションを提供するためである。

もちろんLinuxを扱うようになった背景には成長といった要素や財務要因もある。組み込み市場全体で見れば、全体の30%がベンダが提供するOSであり、70%は各社が独自のOSを採用している。ベンダが提供するOSの内訳を見れば、Wind Riverは高いシェアを獲得している。これからは70%を占める独自OSの部分にもシェアを広げていく方針であり、その戦略の1つにLinuxがあるというわけだ。

これからの組み込み開発は「コアコンピタンスに注力すればよい」

Linux自身はオープンソースソフトウェアだが、そのまま組み込み機器に採用するのは難しいと言える。デバイスは複雑化する傾向にあり、デバイスドライバの開発にはことのほか開発費用がかかってしまう。Artt氏によると「Wind Riverは商用ベースのLinuxパートナと協力することでこうした問題を解決し、スタートアップ時の負担を減らすことが可能」という。さらに「米AMXの事例では、200万ドルの費用削減が実現できた」と語った。

もちろん、開発するデバイスによってこの効果は大きく変わってくるわけだが、コアコンピタンス以外の部分を同社が引き受けることで、顧客はコアコンピタンスに注力できるという利点が生まれる。エンジニアがカーネルまで開発することは直接の収益には結びつかないことが多いため、この部分はコミュニティや同社に任せたほうが費用削減に繋がることもある。