「OS」というと、WindowsやMac OS、Linuxなど、パソコンやサーバ向けのOSを連想する読者も多いことだろう。しかし、OSを搭載している機器は、これだけではない。身近なところでいうと、携帯電話にはじまってインターネットに接続するブロードバンドアクセスルータ、プリンタ、ゲーム機、テレビに代表される家電製品など、身の回りに溢れている電子機器(あるいは組み込み機器)にもOS――いわゆる「組み込みOS」が搭載されているのだ。
組み込みOSの中でも、高い信頼性とシェアを誇るのが米Wind Riverの「VxWorks」である。日本においても、携帯電話の基地局の多くはVxWorksを採用している。そのほか、レーザープリンタや複合プリンタ、IP電話やWi-Fi電話、ブロードバンドアクセスルータ、そして高い信頼性が求められる医療機器やFA、自動車、航空、宇宙、防衛など、多くの組み込み機器でVxWorksは活躍している。また、現在、日本が注力しているロボティクスの分野においてもVxWorksの採用は進んでいる。
同社の戦略について、同社のVice President of Worldwide Sales and ServicesであるDamian Artt氏に話を聞いた。
Wind RiverのVice President of Worldwide Sales and ServicesであるDamian Artt氏 |
Linuxとモバイルガジェットへ進出するWind River
Wind Riverは1981年に設立した組み込みOSベンダである。1987年に組み込み向けのリアルタイムOS「VxWorks」を発表。このOSは1997年にNASA探査機にも採用され、火星へ送られた初の商用OSとなった。2003年にはOSDLおよびEclipse Foundationに参加、2004年には最新版となるVxWorks 6.0を発表、2005年には「Wind River Platform Linux Edition」を出荷、2006年にはマルチコアへの取り組みを強化している。同社は2001年にはBSDiからBSD/OSを買収し、FreeBSDの支援を表明していた時期もあった。その後、同社はFreeBSD支援をFreeBSD Mallへ譲り、現在ではLinuxを推進している。
2007年に入ってからはFinite State Machine LabsからRTLinuxの関連特許や商標などの使用権を買収、Googleの提唱したOpen Handset Allianceへ参加、同じく携帯プラットフォームソリューションに関連したLiMo Foundationへ参加、Wind River LinuxwをplatformOViAに対応、2007年12月にはWind River Linux Platformの発表を計画するなど、Linuxプラットフォームへの注力と携帯端末への関与を強めている。