大小1,000を超えるテレビ局が存在
テレビ放送は、一般に制作から視聴までの過程において、撮影、編集制作、審査、番組発信、番組受信(中国ではケーブルテレビが主流)、ケーブル伝送、テレビ受像機やSet Top Boxによる放送受信というプロセスを経るが、それぞれの段階で関連技術のバックアップが必要だ。当然、現在の放送業界はデジタル化が急速に進んでいるので、従来のハードウェア主体のアナログ技術から、ハードとソフトが一体となったITソリューションを中核とするデジタル技術に移行している。
中国には1,000局を越える大小のテレビ局がある。テレビ業界は番組制作から番組視聴に至る巨大な産業チェーンを構成しているが、この産業チェーンの中の細分化された各市場に、数多くのITソリューションサプライヤーが存在する。
これらの企業は、規模的に見れば中小企業が主体である。これらの企業のイメージとしては、市場ニーズに対して迅速に対応し、製品の更新もスピーディで、中国国内外の競争相手と熾烈な競争を繰り広げ、自らのイノベーションにより生存と発展を目指す、といったものが挙げられる。以下、そうしたイメージに合致する3社を紹介する。
イノベーションを進める北京の中小IT企業
まず、2002年に創業した北京天維創力科技(以下、天維創力)を紹介する。中関村という中国ソフトウェア産業の一大集積地区を抱え、北京の文教地区でもある海淀区を拠点とする天維創力は、主としてソフトウェア開発、映像処理、UPS(無停電電源装置)回りのシステムインテグレーションおよび販売代理業を行っている。同社が開発したコンピュータグラフィックス関連技術はすでにいくつかの大学で採用されており、市場での販売状況も良好だ。また、同社の字幕システム、図形処理システム、ノンリニア編集機もテレビ局や映像制作会社、政府機関、工場、企業、病院、学校などに導入されている。
2社目となる北京算通科技発展は、デジタル放送関連、特に映像圧縮技術に強みをもつシステムソリューションサプライヤーだ。同社は1997年に設立され、創業時のメンバーは中国科学院コンピュータ研究所、ハルビン工業大学、清華大学といった中国を代表する研究機関や大学、業界団体のスタッフで、1996年からはMPEG規格の制定プロセスにも参画、デジタルテレビ分野で豊富な経験を積んできた。
1997年5月に創業した北京冠華栄信システムプロジェクトの前身は北京冠華栄信システムプロジェクトで、2005年に株式会社となった。同社はラジオやテレビの番組制作、送信回りのシステムエンジニアリング、設計施工、取り付け、テスト、メンテナンス、さらには、関連ソフトウェアやハードウェア設備の開発や製造、リース、デジタル映画上映、有線モニタリング、オフィスネットワークや公共情報システムのシステムインテグレーションなど、広範な領域に携わっている。
3社の事業を見て共通するのは、テレビメディア業界の一連のソリューションが急速にアナログからデジタルへ、従来のSD(Standard Definition)画質時代からHD(High Definition)画質時代に転換しつつある流れに乗っていることだ。テレビメディアのコンテンツは劇的に増加しており、都市在住の中国人が観ることのできる衛星チャンネルはすでに100を超える状況だ。
デジタル化が進んでいる技術の1つの例が、字幕制作システムであろう。従来の磁気テープをスタジオでリニア編集機によって処理するのはそろそろ時代遅れとなってきている。北京や上海など大都市のテレビ局は、コンピュータ上で処理できるノンリニア編集機とWindows用SD / HD対応字幕制作ソフトウェアという組み合わせによるソリューションに取って代わられようとしている。