そして、コンピュータの世界で忘れてならないのはゲームである。まだ、コンピュータが大企業に1台という時代であった1962年に、Steve Russell氏によってMITに有ったPDP-1コンピュータ上にStar War!という対戦型のゲームが作られた。そして、1971年には、それのアーケード版であるComputer SpaceやGalaxyが作られた。

アーケードゲーム機のComputer Space(左)とGalaxy(右)

この、GalaxyはミニコンのPDP-11/20を使っていたが、LSI技術の進展で、ゲーム機のコストが大幅に下がり、1975年には家庭向けのゲームマシンであるAtariのSuperPongが発売された。(但し、家庭用ゲームマシンの元祖は1972年に発売されたMagnabox社のOdysseyである。このマシンはLSIを使わず、アナログ技術で作られており、複雑な背景を描写することはできなかった)

中央の白いボックスがAtariのSuper Pong、下段の左端に半分顔を出しているのがTexas InstrumentsのSpeak & Spell。

1977年に発売されたTexas InstrumentsのSpeak & Spellは、4ビットマイコンと音声合成用のDSPを搭載しており、言葉で「アップルのスペルを入力してください」と言うように話しかけ、キーボードから正しくスペルを入力すると褒めてくれ、間違えると、もう一度などと言って、子供に英単語のスペルを覚えさせる教育玩具である。

音声合成自体が珍しかった時代に、$50という驚異的な低価格で販売された。筆者も購入して、$50でよくぞここまでと感心していたのであるが、コンピュータ素人の隣人からは、(録音メッセージを再生する人形などと較べて)「$50もするのに音が悪い」と言われてガックリ来た記憶がある。

Computer History Museumの運営はボランティア

このComputer History Museumの運営はボランティアで行われており、入場は無料で、運営費は寄付で賄われている。シリコンバレーという地の利からコンピュータ関係のビジネスで財をなした人も多く、博物館は2006年3月までに$77Mあまりの寄付を集めている。2005年にはBill and Melinda Gates Foundationが$15Mを寄付しており、その他にも、博物館の元となったコレクションを提供したGordon Bell氏の財団やベンチャーキャピタリストのJohn Doerr氏、Palmの創立者のDonna Dubinsky氏、Intelの幹部であったDave House氏などが$65536以上の高額寄付者に名を連ねている。

Computer History Museumの入り口の扉。左は、ドアに書かれた開館時間の案内部分の拡大。

以上、紹介したように素晴らしい博物館であるが、難を言うと、ボランティアで運営されているので、開館が水、金、日曜日の午後1時から4時と土曜は午前11時から午後5時までと短い点である。しかし、この紹介記事を読むのと、現地を訪れて現物を自分の目で見るのは大違いで、写真では見えない色々な発見がある。シリコンバレーに出張の際は、ゴルフやショッピングだけに自由時間を費やさず、是非、Computer History Museumを訪ねて戴きたいものである。

本稿に使用した全ての写真は、Computer History Museumの許可を得て掲載しています。