財務報告に係る内部統制の有効性の評価は、原則として連結ベースで行います。したがって、内部統制の構築は、子会社、関連会社を含めた活動となります。上場している限り、継続して対応が必要になりますので、きちんとした計画を立て、体制を整備しなければなりません。経営者直属の内部統制プロジェクト室を作り、経理や財務の専門家、ITの専門家などからなる専属メンバを含む構成にすることをお勧めします。
次に内部統制の整備と評価の範囲を決めるスコーピングという作業を行います。内部統制の評価はすべての事業拠点のすべての業務プロセスで行う必要はなく、金額的または質的重要性に基づき適切に選定します。
範囲を必要より広く取った場合は、後に続く文書化と評価の作業量が多くなり、企業の負担も増えます。
逆に、範囲を必要より狭く取った場合は、外部監査人の監査を受ける際に、評価範囲が適切でないことを指摘されるかもしれません。
ではどうすればよいかというと、範囲を多くとる分には問題はなく、自社の内部統制がよい良いものになると考えることです。また実施基準では評価の範囲について事前に監査人を協議をすることを認めています。期末日間際になって、監査人から評価範囲が狭いと指摘されても、修正する暇はありませんので、期中の早いうちから評価の範囲について監査人と協議することは重要です。
実施基準では評価の範囲について次のような指針を出しています。
- 全社的な内部統制については、すべての事業拠点で評価します
- 決算・財務報告に係る業務プロセスについても、すべての事業拠点で評価します
決算・財務報告に係る業務プロセスとは、総勘定元帳から財務諸表を作成する手続きなどが含まれます。
次に重要な事業拠点を選定します。売上高などを用いて金額の高い拠点から合算し、一定割合に達するまでの拠点を選定します。全社的な内部統制の評価が良好であれば、この一定割合は3分の2程度であると示されています。
重要な事業拠点における売上、売掛金および棚卸資産など、事業目的に大きくかかわる勘定科目に至る業務プロセスをすべて評価します。
すべての事業拠点において、特に重要な業務プロセスは個別に評価対象に追加します。
以上の作業により評価範囲が決定した段階で、評価範囲について監査人と協議の場を持ちましょう。
提供:オービックビジネスコンサルタント
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