歴史を振り返れば、IT業界での成功はエコシステムの構築と開発者/パートナーの育成や支援にかかっているといえる。メインフレーム時代のIBMしかり、PC時代のMicrosoftなど、開発者やパートナー企業の支援や関係強化を重視した企業が一時代を築いている。広くプラットフォームを開放し、パートナーと共に成功を共有するシステムを構築したほうが、長い目で見て市場の拡大につながるからだ。
Salesforce.comもまた、この道を歩もうとしている。Benioff氏は、同社成功のための3つの柱として「アプリケーション」「プラットフォーム」「コミュニティ」を挙げている。「Salesforce」の名称で呼ばれるアプリケーションは同社の主力製品だが、それと同時に近年ではAppExchange、Apexといったアプリケーション配布プラットフォームや開発プラットフォームをリリースし、さらにデータベースやアプリケーションの実行インフラなど、同社の根幹ともいえるサービスのサードパーティへの貸し出しも行っている。サードパーティはこのプラットフォームを活用することで、Salesforce以外の自社独自のアプリケーションの開発や販売も可能となる。
つまり、Salesforce.comがサーバやネットワーク、OSといった実行環境を開放し、一種のエコシステムを構築した状態となっている。これはちょうど、MicrosoftがWindowsをベースにアプリケーションの開発環境を他社に広く開放しているのと同じことだ。「Salesforce.comのデータセンター構築には、すでに莫大な予算と最新の技術が大量に投入されている。だれもがこうしたインフラに投資するのは非効率で、やりたがらないはずだ。もし、このSalesforce.comのインフラに各自のアプリケーションを持ち込んで共有することができれば、大きなビジネスチャンスとなるだろう」とBenioff氏はエコシステムの利用を介してパートナーと成功を共有するのが同社の目指すべき道だと述べ、開発者コミュニティへの参加を訴える。