Web 2.0 Expoはカンファレンス・セッションのほか、キーノートスピーチ、パネルセッション、デモセッションを2時間程度にまとめた全体セッションが毎日用意されていた。
初日のキーノートを担当したのはAmazon.comのJeff Bezos氏だ。Amazonが手がけるWebアプリケーション向けのオンラインストレージサービス「S3 (Simple Storage Service)」と仮想コンピューティング環境「EC2 (Elastic Compute Cloud: ベータ)」に関する情報をアップデートした。
Amazonは12年にわたって"Amazon"というWebスケール・インフラを構築してきた経験から、S3、EC2、そしてSQS (Simple Queue Service)を通じて、Web起業家が効率的に資金を運用できるスケーラブルな仮想サーバ環境を提供しようとしている。
Bezos氏によると、AmazonのWebサービス事業は投資段階であり、今のところ黒字化の見通しは立っていない。だが同氏は「どのようなタイプであってもWebスケール・アプリケーションを構築しようとすれば、エネルギーの7割をバックエンドに注ぎ込むことになる」と指摘する。起業家にとって、この7割が重労働であり、かつ上手く対処しなければせっかくのアイディアが台無しになってしまう。
S3とEC2は、この重労働を手助けする。例えばBezos氏が2000年に設立した航空宇宙ベンチャー「Blue Origin」のサイトでは、今年1月にロケット打ち上げテストのビデオを公開したところ、Slashdot.orgやBoing Boingに取り上げられたことで瞬発的にトラフィックが急増した。ピーク時にはリクエスト数が1日に3,500万件、データ転送量が758GBになったが、S3とEC2が問題なく処理してくれた。その月のBlue Originへの請求額は304.23ドル。ほとんどはビデオ公開時のトラフィックだった。
このように突発的なトラフィック増にもスケーラブルに対応でき、かつ運用コストを抑えられるS3とEC2を使えば、「アイディアを製品として形にできる」とBezos氏。その方法を探し求めている人が多いという実感があるからこそ、Amazon.comと同様に事業として成立させる自信があるという。成長の兆候はすでに現れ始めており、S3に保存されているオブジェクト数は、昨年の7月から今年4月の間に8億件から50億件に増加したという。