医師の学習環境をモノクロからフルカラーにしたい
―― 色へのこだわりは、学習したときと実物を見たときで、違う色に見えては混乱してしまうからでもあるわけですね。
外川氏:はい。それについては、実は最近、気が付いた大きな問題が一つあって、それとも関連しています。我々皮膚科の医師が見る皮膚は、当たり前ですがフルカラーの情報です。黒いデキモノをダーモスコピーで見ながら、どういう性質の黒さなのか調べたりするわけです。
ところが、医療現場の検査では、X線にしてもMRIにしても、CTや超音波にしても、ほとんどが白黒に近い状態で情報を見るんです。皮膚科が行う検査でも、水虫の検査などは顕微鏡で半透明な白い構造物を見て判断しています。淡い色が付いている程度なので、色ではなく構造(カタチ)で判断するんです。
病理診断も基本的には赤と青の二色刷で見ます。色は付いていますが、二色刷では白黒で見るのとあまり変わりません。
そう考えると、我々医師は無意識のうちに色を無視して構造で病理を捉えようとするクセがついてしまっているのではないか。だから、ダーモスコピーの症例画像を見ると、普段は白黒テレビを見ている人が、いきなりフルHDのカラーテレビを見るようなギャップがあって、分かりにくさを覚えてしまうのではないかと思ったのです。
外川氏:佐々木さんに描いてもらうイラストは、病理のために科学的に染めた色ではなく、リアルに近い組織の色を反映しています。余計な構造物も描かないので、見た人がシンプルかつダイレクトに「あ、そういうことか」と分かるわけです。
今後は、医師の世界もフルカラーの情報が増えていくでしょう。CeMDSの学習コンテンツが、「カラーは見慣れない」という理由で無意識に新しい情報を敬遠しなくなるきっかけにもなればと思います。
佐々木氏:コンテンツは今後も増やしていく予定ですが、着色はそのものズバリで参考になる資料が少ないんですね。外川先生の指摘に頼りつつ、ダーモスコピーの画像を見つつ、あとは自分の皮膚を見ながら想像して、試行錯誤しながら塗っています。