色にこだわることでイラストの分かりやすさを引き出す

―― まずは新たに学習コンテンツをスタートした背景を教えてください。

CeMDS監修の一人、千葉大学大学院医学研究院の外川八英助教

外川氏:ダーモスコピーの画像における所見は、初学者や皮膚科以外の医師にとっては、あまり分かりやすいものではありません。CeMDSの「今日の問題」のようなせっかくのコンテンツが、人によっては難しすぎてしまっているため、もっと初学者のための学習コンテンツが必要ではないかと考えていました。

そんな折に、カシオさんからイラストを組み入れた解説なら、勉強に役立つのではないかとご提案いただきました。実際に佐々木さんのサンプルイラストを見せていただいて「これなら見やすく分かりやすい」と思ったのがきっかけです。

―― 写真ではなく、イラストのほうが分かりやすくできるということですね。具体的にどんなところが分かりやすくなるのでしょうか。例えば、図鑑に載っている人体解剖図のように、動脈は赤、静脈は青、神経は違う色といった具合に、色分けされていたりするのでしょうか。

外川氏:今回スタートした学習コンテンツは、皮膚表面や内部構造の「色」にこだわっています。このため、静脈を青にするなどの、実際とかけ離れた色では表現していません。

色のないところや神経なども、必要なければ割愛しています。色が関係する血管、メラニンの色、あとは脂腺など、色が付いている構造に関してはできるだけしっかり描いて、余計なところは省いています。情報を厳選することで分かりやすくできるのも、イラストの利点だと思っています。

イラストを担当するデザイナーの佐々木さん

佐々木氏:イラストを描くときには、写真より分かりやすくすることと、間違った図にならないこと、この2点を特に心掛けています。

実際の制作は、先にどんな図が必要になるか外川先生と打ち合わせ、私がラフを作って提出しています。ラフの制作には、参考の写真や資料をたくさん見ていますよ。

そのラフをもとに、外川先生から「血管の構造や表皮の厚みとか、色合いに関しては、もう少し赤みが強いほうがよい」とか、「リアリティを出すために血管をもっと複雑に」などと、ご指摘を受けて修正しながら仕上げています。

外川氏:専門の皮膚科医ではなくても、医師ならば皮膚の構造くらいはみんな分かります。でも、ダーモスコピーを専門にしていない医師が、病理の写真を見たり、ダーモスコピーの画像を見ても、「メラニンがこんなに少ないのに、なんでこんなに真っ黒に見えるんだろう」といった疑問点が出てきます。ですから、そういった皮膚の専門医でない医療従事者がぱっと見ただけでも、ある程度は分かるようなものを作りたいんです。

そう思うと、どうしてもイラストに妥協できず、佐々木さんから見ると厳しく感じる注文を出してしまうようです(笑)。

佐々木氏:最初のうちは修正も多くて、一番多いものは6回描き直しました(笑)。