皮膚の異常を気にする人が増えている
がんは早期発見して取り除けば治る。それほど危険性の高くない良性腫瘍と呼ばれるものはもちろん、死亡率の高いがんであってもだ。早期発見こそが、がんの死亡率低下の鍵を握っているのだが、実際にはがんの早期発見は容易ではない。患部が露出する皮膚がんにおいてもこれは同様だ。
患者が自らの異常に気付かなければ病院に行かないし、健康診断を受けても患部が小さく特徴も見えづらければ、医師も診断が難しい。組織や細胞を採取して薬品や顕微鏡などで調べる病理検査であれば、患部が小さくてもかなり正確に診断できるが、検査そのものに時間が掛かり費用もかさむ。
そんな中、皮膚がんを効率的に検査できる検査手法として「ダーモスコピー」(dermoscopy)が注目されている。「ダーモスコープ」(dermoscope)という特殊な拡大鏡を用い、皮膚の表面や内面の色素分布を調べて診断する。自動診断する機械ではないため、すぐに治療が必要な悪性か、心配無用なただのホクロか、それとも経過観察が必要か……と、医師が判断する点は変わらない。だが、医師が従来よりも早く確かな判断を下しやすく、費用もほとんど掛からないため、皮膚がんの早期発見を促すツールとして大いに期待されている。
ダーモスコピーを習得するには、本を読んだり、識者に教わりながら所見の解釈を学んでいく手もあるが、カシオ計算機がクラウドベースで運営する医師向けのダーモスコピー学習サービス「CeMDS」を利用するのが効率的だ。同社が独自のデジタル画像変換技術を応用して、皮膚科の専門医と共同開発したCeMDSは、会員登録(無料)するだけで、パソコンやタブレットのWebブラウザから利用できる。千葉大学や信州大学から提供された豊富な症例写真と、専門医の所見や解説が読めるほか、毎日異なった症例が出題される「今日の問題」にチャレンジするトレーニング機能を備えている。
ダーモスコピーの初学者が基礎から学べる新コンテンツ
2017年に入ってCeMDSは、初学者や皮膚科以外の医師でも基礎知識を勉強しやすい「学習コンテンツ」も公開した。皮膚の表面に見える色やパターンごとに、それぞれ解説文とイラストが付く。皮膚内部の構造を立体的なイラストで表しているので、解説も理解しやすく、皮膚がどんな色や状態になっていたらどんな症状なのか、ぱっと見て分かるよう工夫している。
ほかにも、例えば見出しには「Check」マークが付いていて、ワンタッチで色が変えられる。学習の進捗に合わせてマーク、気になるところだけマークといった使い方ができるだろう。解説文には、蛍光ペンで塗るようにマーキングしたり、覚え書きしたメモ(付箋紙)を貼り付けられる。マーカーやメモは自動的に保存され、ワンタッチで表示非表示が切り替え可能だ。
CeMDSはクラウドサービスなので、普段アクセスするデバイスだけでなく、モバイルで使うタブレットでもマーカーやメモが共有できる。開業医の場合、自宅と診療所のそれぞれのパソコンで隙間時間に勉強したい人も多いと思うが、パソコンを持ち運ぶことなく同じ環境で勉強できるのは、クラウドならではのメリットだろう。
肌の状態を色で分類してイラスト付きで解説する「学習コンテンツ」。2017年2月末の時点で、基本の5色(黒、こげ茶色、淡褐色、灰色、青色)と、その他の3色(赤色、白色、黄色)が掲載されているが、順次拡大していく計画だ |
CeMDSは、医師だけでなく、皮膚のちょっとした異常に関する相談を受ける機会の多い、介護士や看護師も自分のペースで勉強できる内容だ。医師向けというキャッチにこだわらず、興味や関心のある人はぜひ利用してみるとよい。
今回、この学習コンテンツの開発の中心人物であり、監修者でもある、千葉大学大学院医学研究院の外川八英助教と、イラスト担当であるフリーランスの佐々木氏にインタビューし、開発のきっかけや工夫している点、今後の計画などを聞いた。