―― 新FROGMANのフェイスデザイン、表示部分についておうかがいします。フェイスのレイアウトや表示は、従来のFROGMANからたくさん変わりましたか? 従来のFROGMANより一回り大きくなっていますね。

三宅氏「視認性にはかなり気を付けました。ドット表示ですとか、少しきれいなフォントと使って表示のサイズも大きくしています」

牛山氏「先代のFROGMANはタイドグラフが付いていたんですね。タイドグラフ専用の表示スペースをかなり使っていたので、メインの表示が圧迫されていました。新FROGMANでは、タイドグラフをドット表示の中でうまく表現することで、メインの表示を大きくすることができました。

方位計の表示も、通常の時計状態とダイビング中では違うんですよ。潜水時間と水深は非常に重要な情報なので、常に表示しています」

左から、初代FROGMAN「DW-6300」、現行モデル「GWF-1000」、今回の新FROGMAN「GWF-D1000B」。表示の違いに注目

―― 確かに、潜っているあいだは、現在時刻の表示はなくてもいいのかもしれませんね。

齊藤氏「水難救助隊の方々には、本当に細かいことばっかり聞いてましたね。向こうもリクエストしていたこともあって、ひとつひとつ丁寧に協力してくれました」

牛山氏「自分たちで使う道具になるかもしれない話じゃないですか。お互い真剣にやりとりしてきました」

三宅氏「かなりご要望通りのものを作れたと思います」

齊藤氏「打ち合わせの議事録を見返すと、スペックだったり機能だったり操作性だったり、ほとんど書いてあるんですよね。改めて『これもリクエストだったのか、こんなに実現できていたのか』と。より便利なほう、使いやすいほうへブラッシュアップしていく過程を振り返ると、本当にリクエスト通りに作っていたんだなあって感慨深いですね」

―― 水深計から始まって、傾けても測れる方位計、操作性……、そのほかどんなリクエストが?

牛山氏「タイムスタンプや急浮上アラームも、水難救助隊からのリクエストでした。隊員は『現地到着・何時何分』とか『発見・何時何分』とか記録をしますが、水中でメモする手段がないので、該当する時刻を憶えおくしかないんです。

それを、新FROGMANのボタンを押すと、時計にメモリーできるようになっています。これがタイムスタンプで、レスキューシーンを想定した機能ですね。

急浮上アラームは、深いところから浅いところ、水面へと浮上するとき、スピードが速すぎるとアラームで知らせる機能です。ダイビングをする人には常識ですが、水中ではゆっくり浮上しないと、減圧症の危険があるのです」

―― タイムスタンプは、新FROGMANのボタンを押すたびに追加されるのですか? 上書きではないですよね。

牛山氏「全部で20個のメモリーを保存できます。これがいっぱいになると古いものから上書きしていく、『後入れ優先方式』です。水難救助隊の話では、1回の救助活動で10個程度のメモリーが取れれば十分とのことでした。いったんレポートに転記すれば、古いデータは消えても大丈夫なので、少し余裕を持ってメモリー数を20個にしています」

―― やっぱり「FROGMAN」で行こうとなったら、アシンメトリー(左右非対称)のデザインは必須ですよね。

齊藤氏「そうです。自動的に(笑)」

新FROGMANの「GWF-D1000B」(ブルーIP処理、各写真の左側)と「GWF-D1000」。左右非対処デザインのフェイスは、FROGMANである以上は当然

牛山氏「そこでも、水難救助隊に試用していただいたRANGEMANのフィードバックが生きています。

グローブをはめて作業をしていると、時計の右側のボタンが意図せず押されてしまうことがあるんですね。最初はタイムスタンプのボタンを右側に持ってこようと思ったのですが、誤作動する可能性があるので、左側に配置しました」

齊藤氏「新FROGMANは、左の手首に付けることが前提ですね」

―― 新開発のムーブメントやボタン配置など、ケースへの収納や外装面はいかがでしたか。200m防水が大変だったとか、モジュールちょっと大きかったとか、苦労はなかったですか?

齊藤氏「今回はセンサーですね。ケースに対して、センサーの部分をどう作り込んでいくのかという。おっしゃる通り、センサーとボタン配置がピッタリはまって、なおかつ、しっかり気密を確保する構造をどうするのかは、ちょっと考えました」

牛山氏「ここでも、トリプルセンサーVer3の小さい圧力センサーが役に立ちました。旧来の大きなセンサーだと、新FROGMANのケースには収まらなかったでしょう」