今の若い人のほうが、絶対的に手紙を書いた方がいい

――その"ひと手間"をかけられるかどうかの「分かれ目」は何だと思いますか?

「客観的であるかどうか」だと思います。スマホやパソコンでできることのみをする人が増えている中で、みんなと同じことを漫然としていたら埋もれてしまうと考えらえる人は別のアプローチとして考えるだろうし。あとは、もらった人の気持ちを考えられるか。例えば小説の新人賞でも、すごい汚い手書き原稿や、メチャクチャな段組みの印刷原稿で送ってくるような人はその時点で他者性がなく、客観的に作品を捉えられていないので、だいたい内容もつまらないらしいんですよ。『手紙を書いたら喜んでもらえる』と思える人は、割と客観的に物事を捉えられているんだなって思います。それは利他的、つまり『相手の気持ちに立てるか』です。

――なるほど。手書きと言えば、失礼ですが羽田さんご自身は字は綺麗な方ですか?

汚いです。そんな自分がわざわざ手書きで手紙を書いているんです(笑)。パソコンで下書きしたものをプリントアウトして横に置いて、書写の時間みたいな感じで書いています。さすがに小説家なので、内容もしっかり考えてから書かなければいけないだろうということで、手間がかかっています(笑)。普通はそこまでしなくていいと思いますが。

――メールやLINEが当たり前の若い世代に手書きの手紙・ハガキの良さを伝えるとしたら、どんなことを言いたいですか?

啓蒙的に手紙の魅力がどうのこうの言っても誰も振り向いてくれないし、伝わらないと思うんです。もっと具体的に、書いている人が単純に少ない分、書く手間以上の効果があるし、書けばいろいろなことが有利になるよ、と言いたいですね。たとえ見返りがなくても、書いた手間以上の何倍もの想いが相手に伝わるよ、と。手紙を書くことが当たり前の時代ではなくなっている分、むしろその効果は倍加しているのではないかと。だから今の若い人のほうが手紙を書くことで得る恩恵は大きいと思いますよ。

――すっかりメールに慣れてしまった30代、40代はどうでしょう。

『新しく何かをする』と考えるとハードルが高いので、何かと『置き換える』というふうに考えれば、抵抗がないと思います。例えば今までメールで送っていたどうでもいい文章をあえて手紙で書いてみるとか、恋人と一緒に旅行をした時に旅先からその恋人宛てに手紙を送り、それを何日か後に一緒に見るとか。そういうアプローチが自然でいいかもしれません。

――手紙には人と人をつなげる力があると思うのですが、その点についてはどのようにお考えになられますか。

人と人との関係というより、手紙って、たとえそれが相手に届かなかったとしても、書いた方にとって意味があるものですよね。自分の気持ちを整理することができたり、その意味で割と内向きで他者がいなくても成立する、もっと利己的なものでもあると思うんです。ですから、人と人とのコミュニケーションがなんちゃらと言うよりも、相手のことを思って書くだけで、その時間が特別であり、書き終わった後、書き手の中に何か少し変化がある、というものだと思います。

――変化というのは具体的にどういうものでしょう。

例えばある人の顔を思い浮かべながら、その人に会った時に言いたい言葉を思い浮かべながら手書きの文章で表現する、したためるとなると、ある種の恥ずかしさを伴うし敷居が高いと思うんです。けれど、手紙を書いてポストに投函するという行為を経ることで、書き手の中で大きく変わるものってきっとあると思うんです。ちょっとしたハードルを乗り越えることで、実生活において相手に対する見方やアプローチが大きく変わるというか。

――手紙を書く、という行為を通じて書き手である自分の中に変化が生じるということですね。

そうです。メールやSNSではその"形式"の壁を越えることはできませんよね。

――ところで話は変わりますが、羽田さんの中で手紙同様、切手へのこだわりはありますか。

ここ1年は請求書用などで、人生で一番切手を買っているかもしれないです。そして封筒も。封筒は100均で買ったりしていますが(笑)、切手はコンビニや郵便局で買っています。一時期、ギャラが高かったところには珍しい記念切手を貼って、安かったところには普通の切手を貼ったりしてました。その違いはなかなか伝わらないですけど。ふらっと郵便局に行って記念切手があったら買ってしまいますね。

――ちなみに手紙と言えばですが、これまでの人生でラブレターを書いたことは?

ないです(笑)。ただ、恋愛って非言語的なコミュニケーションの要素が大きいと思うのですが、その場で交わされる会話よりも、手紙の形式で思いを伝えた方が有利だろうなとは思いますね。今のところ書く予定はないですけど(笑)。

手軽で便利なメールが当たり前の今、あえて手間をかけて手紙を書くことについて独自の視点から魅力を語ってくれた羽田氏。読者のみなさんも、ぜひ今年の夏は気になる人に思いを馳せて手紙を書いてみてはいかがだろう。自分でも気づかなかった自分自身の気持ちや、相手に対しての感情の発見があるかもしれない。

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