針が液晶窓を避ける!?

牛山氏「この技術を別の機能に応用したのが、"針退避機能"です。PRO TREK初期のコンビネーションモデル(ダイヤルに針と液晶窓を持つモデル)は、針が液晶部分に重なると、液晶部分が見えなくなってしまうという課題がありました。しかし、PRW-6000以降のモデルでは、針をそれぞれ独立して動かせるようになったおかげで、これを解決できたのです」

【左】アウトドアウオッチ「PRO TREK」初の本格的アナログフェイスを持つコンビネーションウオッチ「PRW-5000」。まだ針退避機能はなく、針が液晶窓に重なると、液晶の情報が見にくくなっていた 【右】カシオ計算機 時計事業部 モジュール開発部 牛山和人氏「針退避機能の説明をすると、日本の製品らしい気の利いた機能と喜んでもらえます」

【動画】CASIO PRO TREK「PRX-8000」針逃げ機能
※音が出ます。ご注意ください。

牛山氏「時針や分針で液晶窓が見えにくい状態のときに、気圧や高度、温度を計測すると、針が液晶窓の上から一時的に待避します。マルチミッションドライブが、針の動きに"時間を示す"以外の機能を与えたんですね。

余談ですが、この"一時的"を何秒にするかについても、かなり試行錯誤しました。その結果、3秒間に落ち着きました」

小島氏「冒頭で、時計本来の精度向上もデジタル技術が担保しているというお話をしましたが、その代表的な例が近年のGPSハイブリッド電波ソーラーやスマートフォンリンクです」

【動画】CASIO GRAVITY MASTER 「GPW-1000G」GPS時刻合わせ
※音が出ます。ご注意ください。

小島氏「前回のGPS電波受信が成功したかどうか、取得情報の種類(時刻情報のみ、あるいは時刻情報+位置情報)を秒針が指し示すことに加え、3時位置の針がまるで衛星位置を探知しているかのように動くという"演出"を加えました。本当は動かなくてもいいんですが、GPS電波受信中に動かすことで、人工衛星から電波を受信しているという機能的イメージがいっそうリアルに感じられます。

小さな演出ですが、それによって得られるユーザーの満足度にもこだわり、追求したいと思います。針の役割が、表示から機能へ、そして表現へと広がるようにしたいですね。それは、スマートフォンリンクモデルにおいても同様です」

【動画】CASIO EDIFICE「EQB-500D」スマートフォンリンク
※音が出ます。ご注意ください。

GPS電波受信のデモンストレーションをしながら説明する小島氏

小島氏「スマートフォンリンクモデルでは、時刻情報の受信開始時や受信成功時に秒針を動かして情報をインジケートしてあげることで、時計側の通信状態を確認できるという機能的側面に加え、スマートフォンとの通信がしっかりできているという視覚的な安心感や精度への信頼感が生まれます。これが針の表現です」