「高度な技術は、急に実用化できるものじゃあないんです!」
―― いわれてみれば、これまでも針軸やりゅうずトップに再結晶サファイアがセットされることはあっても、文字板装飾には使われていませんね。OCW-G1100では、標準モデルにも再結晶ブルーサファイアが採用されましたが、やはり針軸のアクセントのみですね。
藤原氏「宝飾時計的な使い方、例えば時字に小さく石を使うなどは、特にレディースウオッチによく見る手法です。それをOCEANUSでやったら『らしくない』といわれるでしょう。
でも、12時位置に大きく工業製品然として使う、なんていうのはOKかな、とは思います。OCEANUSらしい個性やお洒落要素になり得るんじゃないかと」
―― 藤原さんは、再結晶ブルーサファイアを宝飾というより、パーツ素材として見ていらっしゃるんですね。
藤原氏「その通りです。技術部や協業メーカーの方々が開発してくれた優れた素材や技術を、いかにしてデザインに落とし込むか。それが私たちの仕事ですから。
社内外を問わず、多くの技術者や職人の方々が生の情報を提供してくださったり、調べてくれたりしてくれます。それらを調理するのが自分の役割。うまく生かせなければ、宝の持ち腐れになってしまう。だから、私たちデザイナーも情報収集が欠かせません」
―― とはいえ、新技術がすぐに製品に生かされるわけではありませんよね? 試験や試作を何度も重ねるわけですし。
藤原氏「着色や加工、素材生成などデザインに直結する技術は、仕込みに2年から3年はかかります。つまり、数年先に商品化されることを見据えて、先行デザインという形で試験や研究を始めておくんですよ。こんなセラミックができないか、こんな袴の付いた石はできないかと、その間に試作を繰り返す。高度な技術は、急に実用化できるものじゃありませんから。
例えば、セラミックにひび(クラック)が入ったり、ガラスの色が出なかったりと、色々なことがあります。それを何度もやっているうちに、やっと光明が見えてくる。そこで初めて量産に持って行けるのです。
研究と試作段階の同時推進もときにはありますが、もし実現できたら組み込んでみたい、というレベルですね。間に合わなければ、予備の技術で補完できるものに限られます。予想外のことが起きたときに対応できないものはダメ。生産が止まってしまったら、大変ですから」
―― そんなリスクを冒さなくても、OCEANUS10年の歴史で培われ、高められた技術はたくさんありますよね。その安定した技術やノウハウの範囲で、デザインしてはダメなのでしょうか。
藤原氏「ダメでしょうね。それでは、小手先だけのデザインになってしまうからです。前回もお話ししたように、メタルウオッチは『CMF』が何よりも大切。COLOR(色)、MATERIAL(素材)、FINISHING(仕上げ)です。
スイスにも、毎年同じようなデザインを踏襲しながら、要素を新しくすることで古く感じさせないブランドは多い。形状を大きく変えるよりも、表面の色や質感、材質を変えた方がお客様には響くと私は思うんです。高級時計は特にね」
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次回の後編ではいよいよ、OCEANUSの最新モデル「OCW-G1100」と「OCW-S3400 Manta」のデザインについて伺う。各限定モデルの隠された見どころもご紹介する予定。お楽しみに!
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