前回、カシオのアナログウオッチ「OCEANUS」(オシアナス)のアイデンティティともいえる「オシアナスブルー」について、その考え方から着色の技術まで、詳しくお話を伺った。実はその際、ダイヤルデザインやパーツの製造に関する話題も出たが、取材テーマの都合上、あまり触れることができなかったのだ。

OCEANUSのデザイン哲学とは。写真左から「OCW-G1100-1AJF」「OCW-G1100E-1AJF」「OCW-S3400-1AJF」「OCW-S3400C-2AJF」

そこで改めて、OCEANUSデザインの考え方をはじめ、最新のGPSハイブリッド電波ソーラー「OCW-G1100」や、OCEANUSのプレミアムライン「Manta」(マンタ)の最新モデル「OCW-S3400」の見どころとそれぞれの特別限定モデルについて紹介しよう。ご対応いただいたのは、前回に引き続き、OCEANUSシリーズのデザイン・ディレクションを担当するカシオ計算機 時計事業部 デザイン開発部の藤原陽氏だ。

OCEANUSに宿るモノ作りの情熱(後編)
カシオのメタルウオッチ・デザイン哲学、限定モデルならではの冒険も

お洒落な時計とは、どんな時計?

―― まずは、OCEANUSシリーズ全般のデザインについてお伺いします。

カシオ計算機 時計事業部 デザイン開発部 藤原陽氏

藤原氏「OCEANUSは、フルメタルケースの電波ソーラーウオッチとして、メタルウオッチ市場に参入しました。市場参入を決めてからは、とにかく他社さんのメタルウオッチを分析しました。同じことをしても(当時は)店頭で埋もれてしまうと思ったからです。

そこでデザインにおいて導き出された方針は『個性』や『お洒落』でした。市場で多く見られる『実用』『コンサバティブ(保守的)』といったイメージに対して、OCEANUSは個性・お洒落で突き進もうと。それは、現在も変わっていません。

クラシックラインや3針モデルなど、機種も増えてきたので、モデルによっては実用的なものやコンサバティブなものもあります。でも、メインモデルはあくまで個性・お洒落というのがOCEANUSデザインのポリシーです」

―― ひとことで「お洒落」といっても、さまざまな要素がありますよね。藤原さんが考える時計としての「お洒落」とは、どんなものですか?

藤原氏「普段から持ち物や洋服に凝る人に似合うような、見栄えの良さは意識しています。しかし、それ以上に、モノとしての高い完成度、それも本来の機能とは異なる部分まで含めた『神経の細やかさ』が大切だと思っています。

一見わからないけれど、使っているうちにある日ふと『あぁ、ここってこんな作りになっているんだ!』と気付く。あるいは、眺めていると趣や魅力がじんわり伝わってくるとか……。例えば、メタルケースの豊かなラウンド感やエッジのキレ、パーツの勘合箇所の工夫、発色の深みなどですね」

―― そういったこだわりの作り込みが、外観の美しさに結実している時計は、確かにお洒落ですね。こういったところは、スイスブランドが上手なイメージがあります。

藤原氏「日本にも技術はあるんです。しかし、それらを生かすセンスもまた大切。りゅうずの彫刻や石(宝石)の使い方には、日本人ではなかなか思い付かない感覚や発想というものがあるんです。ギリギリで見えるか見えないかという部分に差し色の赤をスッと効かせるとか……。ああいうセンスを身に付けたいとはいつも思っていますね。

細かなところまで神経を研ぎ澄まして作っているんだなぁと、お客様に思っていただける時計。それをOCEANUSは目指しています」