音に丸みがあって、びっくりしました。

GP-500BPを設置した会議室に、力強く豊かな響きが満ちた。幻想即興曲の途中まで弾いたところで指を止め、ひと呼吸した高橋さんは、「音に丸みがあって、びっくりしました。電子ピアノっぽい機械的な音はしませんでした」と笑顔に。鍵盤の感触については「違和感がまったくない、ということはないけれど、グランドピアノに近いと思います」と満足そうに話した。

特に、ピアニシモのような小さい音から、フォルテシモのような大きな音まで、ダイナミクスの違いを思い通りに表現できる点が気に入った様子。頭にある「電子ピアノ」のイメージは、正しくアップデートされたようだった。

音大生も納得したタッチの感触と、音色のリアルさ。これは一体、どのように実現したものなのだろうか? カシオ計算機の開発陣に、そのあたりの秘密を聞いた。

左から、楽器事業部の阪下彰氏、伊藤直明氏、新野立子氏

タッチの秘密 - 自然な弾き心地をとことん追求

カシオ計算機 楽器事業部の新野立子氏によれば、CELVIANO Grand Hybrid(GP-500BP/GP-300BK)にはグランドピアノの鍵盤に用いられる良質なスプルース材による木製鍵盤を使用したほか、グランドピアノの弾き応えを再現する「ナチュラルグランドハンマーアクション鍵盤」などの新技術を採用。自然な弾き心地を追い求めたという。

写真は2015年9月の発表会で展示されていたデモ機の様子。弾き手の繊細なタッチを音に再現する「ナチュラルグランドハンマーアクション鍵盤」の内部機構を確認できる

しかし、素材や内部構造をグランドピアノに近づけただけでは、まだ"自然な弾き心地"には到達できなかった。指の感触だけの問題ではなかったのだ。「演奏者は、鍵盤の弾き応えと出てくる音を、個別には意識しないんですよね」(新野氏)。

そこで開発においては、音の広がり方にもリアルさを求めた。その結果、GP-500BP/GP-300BKには6つのスピーカーを配置。グランドピアノの響板から上下に音が広がる様な「グランドアコースティックシステム」により、グランドピアノさながらの音響を実現した。