12月9日、韓国サムスン・エレクトロニクス(以下、サムスン)が2.5インチSATA SSDの新製品「Samsung SSD 850 EVO」を発表した。Samsung SSD 850 EVOは、2013年7月18日に発表された「Samsung SSD 840 EVO」の後継となる。2014年7月1日発表のハイエンドSSD「Samsung SSD 850 PRO」と同じく、3D V-NANDと呼ばれる3次元構造のNANDフラッシュを採用していることが特徴だ。

ただし、Samsung SSD 850 PROでは、1つのセルに2bitのデータを記録する2bit MLCの3D V-NANDを採用していたが、Samsung SSD 850 EVOでは、1つのセルに3bitのデータを記録する3bit MLC(TLCとも呼ばれる)の3D V-NANDを搭載している。Samsung SSD 850 PROが、アーリーアダプタやエンスージアストを対象にした製品であるのに対し、今回登場したSamsung SSD 850 EVOはメインストリーム向けの製品となる。

Samsung SSD 840 EVOに比べて、ランダムライト性能が大きく向上

Samsung SSD 850 EVOは、2.5インチフォームファクタのSATA 3.0(6Gbps)対応製品であり、厚さは6.8mmとスリムだ。製品のデザインは、前モデルのSamsung SSD 840 EVOとよく似ているが、ボディカラーがグレーからブラックに変わったほか、Samsungロゴや「Solid State Drive」という文字の色も変更されている。

左がSamsung SSD 850 EVO。右がSamsung SSD 840 EVO

容量は、120GB、250GB、500GB、1TBの4モデルが用意されている。なお、Samsung SSD 840 EVOでは750GBモデルも用意されていたが、Samsung SSD 850 EVOでは750GBモデルはなくなった。

サムスンのSSDは、自社開発のコントローラを採用していることも魅力であるが、Samsung SSD 850 EVOに搭載されているコントローラは、容量によって異なる。120GB/250G/500GBモデルは新型の「Samsung MGX」、1TBモデルはSamsung SSD 840 EVOやSamsung SSD 850 PROと同じ「Samsung MEX」が搭載されている。Samsung MGXは、Samsung MEXをベースに改良が加えられたもので、2015年に登場が予定されている第3世代の3D V-NAND(レイヤーの数が48になると予想される)をサポートしているが、基本的な性能についてはSamsung MEXと変わらない。キャッシュメモリは、120GBモデルが256MB、250GB/500GBモデルが512MB、1TBモデルが1GBと大容量だ。

Samsung SSD 850 EVOのシーケンシャルリード速度は全モデルで最大540MB/s、シーケンシャルライト速度は全モデルで最大520MB/sと非常に高速だ。Samsung SSD 840 EVOのシーケンシャルリード速度とシーケンシャルライト速度も、それぞれ最大540MB/s、最大520MB/sで、スペック上は変わっていない。他社の製品だと、小容量モデルでは速度が低下するものも多いが、Samsung SSD 850 EVOは、低価格な120GBモデルでも大容量モデルとほぼ同じ性能を得られることが魅力だ。

Samsung SSD 850 EVO Samsung SSD 840 EVO
シーケンシャルリード 最大540MB/s 最大540MB/s
シーケンシャルライト 最大520MB/s 最大520MB/s

さらに、Samsung SSD 850 EVOはランダムアクセス性能も高い。前モデルのSamsung SSD 840 EVOでは、4KBランダム(QD1)のリードは全モデルで10,000IOPS、4KBランダム(QD1)のライトは全モデルで33,000IOPSだったのに対し、Samsung SSD 850 EVOでは、4KBランダム(QD1)のリードは全モデルで10,000IOPSと変わらないが、4KBランダム(QD1)のライトは全モデルで40,000IOPSと2割以上も向上している。

Samsung SSD 850 EVO Samsung SSD 840 EVO
4KBランダム(QD1)リード 10,000IOPS 10,000IOPS
4KBランダム(QD1)ライト 40,000IOPS 33,000IOPS

4Kランダム(QD32)のリードは、120GBモデルが94,000IOPS、250GBモデルが97,000IOPS、500GBモデルと1TBモデルが98,000IOPSで、Samsung SSD 840 EVOと同じだ。4KBランダム(QD32)のライトは、120GBモデルと250GBモデルが88,000IOPS、500GBモデルと1TBモデルが90,000IOPSとなる。500GBモデルと1TBモデルについてはSamsung SSD 840 EVOと変わっていないが、120GBモデルと250GBモデルのIOPSは、Samsung SSD 840 EVOに比べて大きく向上している(Samsung SSD 840 EVOでは120GBモデルが35,000IOPS、250GBモデルが66,000IOPS)。

4KBランダム(QD32)リード Samsung SSD 850 EVO Samsung SSD 840 EVO
120GBモデル 94,000IOPS 94,000IOPS
250GBモデル 97,000IOPS 97,000IOPS
500GBモデル 98,000IOPS 98,000IOPS
1TBモデル 98,000IOPS 98,000IOPS
4KBランダム(QD32)ライト Samsung SSD 850 EVO Samsung SSD 840 EVO
120GBモデル 88,000IOPS 35,000IOPS
250GBモデル 88,000IOPS 66,000IOPS
500GBモデル 90,000IOPS 90,000IOPS
1TBモデル 90,000IOPS 90,000IOPS

このようにSamsung SSD 850 EVOは、Samsung SSD 840 EVOに比べて、ランダムライト性能が向上しており、特に120GBモデルや250GBモデルではその向上幅が大きい。

保証期間が3年から5年に延長

Samsung SSD 850 EVOは、性能だけでなく、耐久性と信頼性も向上している。書き換え可能容量(TBW)は、Samsung SSD 840 EVOの44TBから、Samsung SSD 840 EVOでは、120GBモデルと250GBモデルが75TBに、500GBモデルと1TBモデルでは150TBへと、大きく増加している。MLC NANDフラッシュ採用の「Samsung SSD 840 PRO」のTBWが73TBであったことと比べても、「3D V-NAND」がいかに高い耐久性を誇るものなのか、うかがい知ることができる。120GBモデルと250GBモデルの場合、1日40GBの書き込みなら、5年以上持つ計算だ(500GBモデルと1TBモデルでは、1日80GBの書き込みで5年以上持つ)。

そのため、Samsung SSD 840 EVOの製品保証は3年間であったが、Samsung SSD 850 EVOでは、5年保証を実現している。他社のメインストリーム向けSSDのほとんどが3年保証なので、Samsung SSD 850 EVOの保証期間はトップクラスであり、ヘビーユーザーでも安心して利用できる。さらに、省電力機能も強化されており、Samsung 840 EVOでは対応していなかったDEVSLPモードをサポートした。スタンバイ時の消費電力(DEVSLP Power)は、120GB/250GB/500GBモデルで2mW、1TBモデルで4mWと、非常に低い。