キャリブレーション機能とは何か?

次は目玉であるハードウェア・キャリブレーション機能だ。一応補足をしておくと、キャリブレーション(較正)とは機器を一定の状態に保つこと、また機器に生じたズレを補正することを指す。この場合の機器とはいうまでもなくディスプレイのことだ。人間の目は非常によくできており、環境に適応できるようになっている。このため、暗所、明所でもそれなりに視野を確保できるわけだが、それだけに精度という点では心もとない。色味のズレたディスプレイでも、しばらく使用していれば、人間の脳が勝手に補正して正しい色のように思えてしまう。だからこそ、PCで色を正確に扱うためには、指標となるディスプレイの表示を常に一定に保っておく必要があるのだ。

そこでキャリブレーションが必要になるのだが、キャリブレーションには大別してソフトウェアによるものとハードウェアによるものがある。前者はユーザーが手動でモニタの色を調整し、補正する方法だ。どのようなディスプレイでも行える手軽さの反面、ビデオカードから出力されるRGB信号の増減によって調整を行うため、諧調が縮退したり、余計な色が乗ってしまうことがある。また、かなりの手間暇がかかるうえに精度の面でも今ひとつだ。

後者はディスプレイの内部に組み込まれた機構によって、直接制御を行う方法だ。当然ながら機構の組み込まれたディスプレイと、それに対応したキャリブレーションツール(ソフトおよび測色器)が必要になる。コストの面でややハードルが高くなるが、その分、作業自体は非常に楽になる。何しろ目標値を定めてしまえば、あとは測色器とソフトに任せておくだけで作業は完了してしまう。実際のところ、ディスプレイの表示を一定に保つためには、最低でも月に1度はキャリブレーションを行う必要がある。その際の労力を軽減できるだけでも、ハードウェア・キャリブレーション機構を搭載したディスプレイを購入する価値はあるだろう。

ハードウェア・キャリブレーションを行うための測色器「i1Basic Pro 2 EO2BAS」(製品には付属していない)

PG2401PTのハードウェア・キャリブレーション機能を試す

それでは、PG2401PTのキャリブレーション機能を見ていこう。PG2401PTには「Palette Master」という専用のキャリブレーションソフトが添付されている。このPalette Masterと対応する測色器(i1Basic Pro 2 EO2BAS、別売)を使用して、ハードウェア・キャリブレーションを行っていくことになる。測色器はX-Rite社のi1 Display Proおよびi1Pro/Pro2に対応している。

インタフェースはX-Riteの「i1 Profiler」と同一であり、ステップ方式で作業を進めていく。「ディスプレイの設定」「プロファイル設定」「パッチセット」「測定」「ICCプロファイル」のステップがあるが、普通に用いる分には、「ディスプレイの設定」にある目標値(RGBプライマリ、白色点、輝度)以外は、いじる必要はないだろう。ステップを進めていき、測色器をセットして測定を開始すれば、あとは終了するまでユーザーがすることはない。

測定が終了したら、ステップは自動的に「ICCプロファイル」に進む。ここで作成したICCプロファイルに名前を付けて保存すると、キャリブレーション結果のチャートと数値が表示される。ガンマカーブや色域比較などの機能も用意されているので、それぞれを確認し、問題がなければ作業は完了だ。実に簡単でユーザーにスキルは必要ない。

Palette Masterは5つのステップで構成されている。ハードウェア・キャリブレーションのため、最初のステップで目標値を定めるだけで、ユーザーが調整を行う必要はない

それではキャリブレーションの結果を見てみよう。下の画像はPalette Masterの「ICCプロファイル」ステップで、キャリブレーションの結果からガンマカーブを表示したものだ。縦横は信号の入出力を256の諧調で示しており、入力に対して出力が等しければ理想的な信号伝達が行われている(色再現性が高い)ことになる。通常、ガンマカーブではRGB各色を表示しており、この画像もその例に漏れないのだが、RGB各色とも理想的な線を描いているため、単に青の直線が見えるだけになっている。いうまでもなく良好な結果だ。

見事に出力と入力が1:1の関係になっている。このため、たとえグレーのグラデーションを表示したとしても、トーンジャンプや色乗りのない、きれいな諧調推移を見せてくれるだろう

次は色域を確認する。ここではPalette Masterで作成したICCプロファイルを、MacOSのColorSyncユーティリティで図にプロットしたものを図示している(下の画像参照)。ICCプロファイルは、PCで主に用いられるカラースペースであるAdobeRGBとsRGBを目標値として設定した。単にPG2401PTの色域を表示するだけではわからないので、各RGBプライマリの色域を比較対象として重ね合わせた。カラーの部分がPG2401PTの色域、グレーの部分が各RGBプライマリだ。両者が一致していれば、それぞれのRGBプライマリを用いたワークフローでそごを生じさせることなく、作業が行えることになる。結果はご覧のとおり、sRGBは申し分なく、AdobeRGBでもわずかに足りない部分はあるものの、ほぼ全域をカバーできている。これならばAdobeRGBのデータも十分に運用が可能だ。

sRGB、AdobeRGBとも色域の大半をカバーできており、いうことはない。キャリブレーション用のカラーモードは2つ用意されているので、それぞれのカラースペースが必要になる環境でも、気軽に使い分けることができる