ここ数年でディスプレイのジャンルは多様化しているが、その先鞭となったのは、やはり色再現性の精度に重点をおいたハードウェア・キャリブレーションディスプレイだ。このジャンルは古くから存在したものの、安価なものでも数十万円はしていた。このため、グラフィックデザイナーや印刷業界、写真家など、完全にプロフェッショナル用の機材として用いられるのが常だった。それが昨今では開発・製造技術の進歩とともに、デジタルフォト・ムービーの急速な浸透によって拡大したユーザーニーズが低価格化の後押しをし、十数万円ほどの製品も登場している。さすがに通常のディスプレイよりも値は張るものの、ホビー層でも十分に手の届く程度にまでハードルが下がったため、プロフェッショナルはもとより、ハイアマチュアでも当然のように活用していることが多くなった。
ここで紹介する「PG2401PT」は、ベンキューが昨秋発売したハードウェア・キャリブレーションディスプレイだ。同社としては初めてのハードウェア・キャリブレーションディスプレイとなるだけに、寸分のすきもないほどに高い完成度を備えている。
[液晶パネル] IPS [バックライト] LED [画面サイズ] 24.1型ワイド [表示解像度] 最大1920×1200ドット(WUXGA) [視野角] 左右178度、上下178度 [輝度] 350cd/平方メートル [コントラスト比] 1000:1(DCR最大1200万:1) [応答速度] 12ms(GTG 5ms) [表示色] フルカラー約10億7000万色 [映像入力インタフェース] HDMI×1、ミニD-sub15ピン×1、DVI-D×1、DisplayPort×1、mini DisplayPort×1 [スピーカー] - [スタンド機能] チルト:下5度/上20度 [VESAマウント] 100×100mm [本体サイズ/重量] W542.6×H555.4×D254mm/約7kg(遮光フード除く) [価格] 実勢価格128,000円(税別)
10ビットパネルの採用で、高い色・諧調の再現性を確保
まずは液晶パネルから見ていこう。PG2401PTは24.1型ワイド(16:10 1920×1200)の液晶パネルを搭載している。駆動方式はAH-IPS方式のため、視野角は水平・垂直とも178度と広く確保できており、視点を動かしただけで周辺の色味が変わって見えてしまうといったことがない。さらには、表示域の輝度と色度を調整するブライトネスユニフォーミティコントロール機能を搭載しており、常に安定した表示のままで作業が行える。輝度は350cd/平方メートル、コントラスト比は1000:1とかなりの余裕があるため、動画などの編集にも向いている。
肝心の色再現性については、10ビットパネルの採用によって対応。これにより、通常の8ビットパネルに比べて高い色・諧調の再現性を確保している。これと同時に搭載するルックアップテーブルは14ビットに対応。信号をモニタ内部で多諧調化して、最適な値を抽出・表示するため、非常にきれいな諧調推移を見せてくれる。
グラフィックワークに用いるなら色域の広さも重要な要素だが、PG2401PTはAdobeRGBの色域で99%、CMYKの色域は100%を確保している。最近は入力デバイスのレンジが非常に広がっているが、これだけの色域を備えていれば、運用するに際して不満を感じることはないだろう。先に記した高ビットの信号処理と併せて、蒼穹や花弁など、鮮やかながら緩やかに推移していく色合いも、しっかりと再現できている。