液晶ディスプレイでフリッカーが発生する仕組み
フリッカーフリーとは、フリッカー(チラつき)の無い表示が行えるという意味である。CRTディスプレイを使用していた人ならばお馴染みの言葉だろうが、液晶ディスプレイにおけるフリッカーの発生原因は、CRTディスプレイの場合とは異なる。
CRTディスプレイのフリッカーは、基本的にインタレース表示や画面書き換え頻度(リフレッシュレート)の低さから発生したが、液晶ディスプレイのフリッカーは光源の明滅によって生じる。これは多くのLED液晶ディスプレイがPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)調光という方式を採用しているためだ。
PWM調光ではバックライトの点灯と消灯を繰り返し、明滅の割合を調整することによって、視覚的な明るさを調整する。この明滅が人によっては認識できてしまうし、はっきりとは感じない人でも知らぬ間に目に負担をかけていることがあるわけだ。寿命がきて点滅する蛍光管の下で読書をしているようなシーンを思い浮かべると通りが良いかもしれない(さすがにそこまで酷くはならないだろうが)。
LEDバックライトの明滅で輝度をコントロールするPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)調光。低輝度に設定するほど、LEDバックライトが消灯している時間が長くなるため、ちらつき(フリッカー)として人間の目で感じやすくなる |
目への負担だけでなく、心的にもストレスとなるのは想像に難くない。先に記した厚生労働省の「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」でも、ディスプレイの要件として「フリッカーは、知覚されないものであること」と記載してある。
それでは、なぜ今まで液晶ディスプレイのフリッカーが問題にならなかったか? これは従来の液晶ディスプレイが冷陰極管を光源としていたためだ。冷陰極管は残光の時間が長いため、視覚への刺激の変化が小さく(認識しにくく)、PWM調光でもフリッカーフリーの表示が可能だった。これに対してLEDは残光時間が短く、視覚への刺激の変化が大きい(認識しやすい)ため、フリッカーが感じられるようになってしまったわけである。
当然ながら、輝度が低くなれば明滅する頻度は多くなり、チラつきも目につきやすくなる。それならば、明滅を必要としない最大輝度で表示すればフリッカーは防げるのではないか? それは確かにその通りだが、250cd/平方メートル、300cd/平方メートルという輝度で作業をしていては、それこそ目の負担が増大してしまうため本末転倒である(一般的には、文書作業では80cd/平方メートル程度、画像や動画の閲覧/作業でも100~120cd/平方メートル程度の輝度が適切とされている)。
DC調光方式でフリッカーフリーを実現した「GW2760HS」
このフリッカーを解消するためにBenQは、GW2760HSにDC(Direct Current:直流電流)調光方式を採り入れている。DC調光とは、光源への電流値を変化させることによって明るさをコントロールする方式だ。これならば光源が明滅をしないため、原理上はフリッカーを無くすことができる。それでは、なぜすべてのLEDバックライト液晶ディスプレイがDC調光を用いないかといえば、PWM調光の方が設計も制御も簡単でコストを抑えられるためだ。
ただし、DC調光方式も万能ではない。輝度を適正に調整することは目の負担を軽減するための基本だが、DC調光では低輝度での色再現性が不安定になるという欠点が存在する。これを解消するために、BenQはGammaCalibrate technologyを新規に開発し、すべての輝度レベルで安定した色再現性を実現したという。
フリッカーフリー対応機の効果は文章で書くよりも視認してもらう方が良いだろう。下にGW2760HSと、同じくVAパネルを搭載した同社のフリッカーフリー非対応機「VW2424H」を比較した画像と動画を掲載しているので確認していただきたい。
テスターの所感も添えておくと、工場出荷状態では両機ともさほど違和感無く使用できたが、輝度をsRGBの基準である80cd/平方メートルあたりまで落とすと、フリッカーフリー非対応機ではチラつきが感じられた。
左がフリッカーフリー非対応機「VW2424H」、右がフリッカーフリー対応機「GW2760HS」。違いを分かりやすくするために、輝度設定を調整している。VW2424Hは、フリッカーと扇風機(羽根の回転数)が干渉し、モアレとなって現れた。一方のGW2760HSは写真右の通り。モアレがまったく出ていない。これは肉眼で見てもはっきり分かる |
フリッカー |
フリッカーフリー |
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