――椋本さんは、最初どのような形で今回の話を聞きましたか?

イラストは椋本夏夜氏が担当

椋本夏夜氏「とりあえず女の子のイラストを1枚というオーダーだったんです。それに声優さんが声をあてて、短い時間、テレビで流す企画なんだけどって。まずはそういった外見のお話をいただいたのですが、アニメで動かせない絵という話は、先ほど初めて聞いたので、ちょっと驚いています(笑)」

稲垣P「もちろんデザインとしてはアニメでも有り得るんですけど、彩色やタッチの部分は絶対にムリだと思います」

――イラストの内容についてはどのようなリクエストがありましたか?

椋本氏「『可愛い女の子を1人。それ以外に縛りはありません』とだけ言われました。なので、放送時間帯が夜なので、夜のご挨拶に出てくる女の子がいいかなって、シチュエーションは自分で勝手に考えて描きました」

――細かい指示があったわけではないんですね

椋本氏「それはお任せということで、別に昼間でもいいし、外でもいい。シチュエーションに関する縛りはまったくなしで、とにかく可愛い女の子を1人描いて、というお話でしたね」

――それはそれで難しい要求ですよね

椋本氏「多少でも縛りのあるほうが描きやすいこともありますが、今回は企画の意図からお伺いしていたので、逆に私から『それならこういうのがいいのでは?』といった提案をさせていただいた形です。そうしたら、『はいはい、それで大丈夫です』ってわりと軽い感じでした(笑)」

――稲垣さんは椋本さんに描いてもらえればそれでよかったわけですね

稲垣P「椋本さんに描いてさえいただければ、だいたいOKという感じはありました。椋本さんは、いろんな方向で魅力的な絵を描かれるのですが、今回、このあたりの方向性なら嬉しいなっていうのがいくつかありまして、今回、その中のひとつが来たので、"しめしめ"みたいな(笑)」

椋本氏「私からお伺いしたのは、内容ではなく外側の話、テレビに映すのなら色数などに制限はありますか、といったことでしたね。たとえば印刷物の場合は、ピンク色がキレイに出なかったりするわけですよ。すると、『それもないです。とにかく縛りはありません』というお話だったので、これは自由にやっちゃっていいんだなと」

――イラストのイメージはすぐに思い浮かびましたか?

椋本氏「コンセプトを伺って、それに合う絵という感じで組み立てていったら、特に悩むことなく仕上がった感じですね。ほかの作業もあったので、お話を伺ってからすぐにラフを切ったわけではなく、頭の中にもやもやっとした状態で数週間ほど寝かせていた期間もあるのですが、寝かせておいた分、よりいい感じに仕上げられたと思います」

――頭の中でイメージしたものを実際にイラストとして描くのに、あまり時間はかかっていない感じですか?

椋本氏「イメージをイラストに落とす作業も決して簡単ではないのですが、今回に関しては、構図的にも、シチュエーション的にも、それほど難しいものではなかったので、あまり時間はかからなかったです。たとえば大聖堂があったり、キャラクターが30人ぐらいいたりすると、すごく大変ですけど(笑)」

――先ほども少しお話に出ましたが、印刷物用だと色数などに制限があると思うのですが、今回のように、ご自分の描かれた絵がそのままのイメージで表現されるというのはいかがですか?

椋本氏「それはすごくうれしかったです。特に青やピンク系の色は印刷すると思ったとおりの色が出ないので、ガッカリすることが多いんですよ。基本的にパソコンで作業をしているのですが、モニタで見ている色は、印刷するとどうしても違う色になってしまう。それを防ぐために、最近ではCMYKプレビューで作業をしていたりもするのですが、それでもやはり、青、ピンク、紫あたりが悲しいことになりますし……。なので、制限がないと言われて、喜び勇んで髪の毛をピンク色にしてみました(笑)」

――髪の毛のピンク色は、狙い通りの色というわけですね

椋本氏「出来上がりをDVDで見せていただいたとき、ちゃんと思ったとおりの色になっていたので、すごくうれしかったです。それで、さらに声がついていたので、余計にテンションが上がりました」

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