新連載「どうぶつの国」はリアルな世界を描く
――それでは各作品についてお伺いしたいのですが、まずは「別冊少年マガジン」で連載が始まる『どうぶつの国』について教えてください
「人間の世界で母親に捨てられた赤ん坊が、どういう経緯か、動物しかいない星にたどり着きまして、それをタヌキが拾って、育てはじめるという物語ですね」
――やはりファンタジーの世界が舞台になる感じですか?
「自分の中では、実在の動物が登場するリアルな野生の世界を描きたいと思っているんですよ。まあ、あのタヌキがリアルかといわれると程遠いものがありますが(笑)。なので、ファンタジーというよりも、どちらかというとリアルな世界観を目指しています」
――ドキュメンタリーに近い感じでしょうか?
「ドキュメンタリーではないですが、とにかく動物のリアルな生態を描きたいんですよ。やはり面白いんですよね、リアルな世界、厳しい世界を生き抜いている動物たちというのは。それだけでドラマがありますので、そういう部分をうまく取り入れていければなと思っています」
――作品のテイストとしては、ほのぼのとした感じというよりも、自然の厳しさを押し出したような感じになりますか?
「その両方ですね。ただかわいいだけでは読者の方もついてきてくれないので、かわいくてほのぼのした世界も描きつつ、自然界における弱肉強食の厳しい掟も描いていきたいなと思っています」
――『金色のガッシュ!!』に見られるような、先生ならではのバトルの「熱さ」という部分はいかがですか?
「ありますよ。『ガッシュ!!』のようにバトル中心というわけではないですが、縄張り争いの噛み付きあいとか、生きるために獲って食うといった、まさに自然界のリアルな戦いを描いて"熱さ"を表現していければ……と思っています」
――先生の作品となると『ギャグ』の部分も注目されると思いますが、そのあたりはいかがですか?
「ギャグもたくさん入れてます(笑)。本当はほのぼのしたギャグ1本でいこうかなとも思っていたのですが、それだけだとやはり物足りないんですよね。50ページという長さを考えると、ギャグだけではなく、ちゃんと"熱さ"もいれて、ストーリーも入れてというのが、理想になると思います」
――続いては、「週刊少年マガジン」に掲載される『どうぶつの国~エピソード0~』についてですが、こちらの作品は『どうぶつの国』のプロローグ的な位置づけになるのでしょうか?
「そうですね。物語内の時間的には1話目より前のエピソードになります。でも実は原稿が3話目まで完成した後に、『エピソード0』を描いたんです。というのも、『どうぶつの国』第2話で"クロカギ"という黒いオオヤマネコが考え方をガラリと変えるという話を描いたときに、この"クロカギ"の過去をもう少し深く掘り下げてみたいと思いまして」
――プロローグ的な『エピソード0』が、本編の『どうぶつの国』と同じタイミングで出てくるというのはかなり斬新な感じですね
「『どうぶつの国』の第1話目には、"クロカギ"は1シーンしか出てこないのですが、『エピソード0』だと主人公ですからね。『エピソード0』と『どうぶつの国』第1話はかなりテイストが違うのですが、その両方の要素を含んだ第2話まで読んでいただければ読者の方に『どうぶつの国』がどのようなお話なのか、全体の世界観が理解してもらえると思うんですよ。そして、そこからの新たな展開として、3話目以降が続いていく感じになります」
――『どうぶつの国』の本編だけでなく、『エピソード0』も読むことで、はじめて『どうぶつの国』が始まるという感じですね
「そうですね。できれば二つの作品をあわせて読んでいただきたいというのが自分の大きな希望です」
――それでは「月刊少年マガジン」に掲載される『アオソラ』について教えてください
「これは自分の青春時代を照らし合わせて作ったお話で、完全なドキュメントというわけではなく、フィクションも足してはいますが、ある男の子のリアルな世界における物語を描いています。ちょっと絵の才能はあるけれど、本気で打ち込むことができないでいる少年が、本気になって物事に打ち込むきっかけとなるお話しです。ずっと昔から、いつかは描こうと思っていたテーマで、リアリティを重視した、友情モノ、青春モノといった感じですね」
――ということは、主人公は先生自身を投影したキャラクターになりますか?
「そのあたりは、読者の方の想像にお任せします(笑)」
――今回発表される5作品は、本当に描きたかったものをすべて出したという感じですね
「そうですね。実はいろいろな編集さんとお会いしたのですが、皆さん、何か描きたいものを描かせてくれようとするんですよ。それで『何か描いてほしいものがありますか?』って聞くと、『バトルで、熱いもので……』って、だいたいが"ファンタジーバトル"を期待されていて。いわゆる『ガッシュ』のテイストなんですね。でも、『アオソラ』も、『ジャンプスクエア』さんで描く『Class Room』も、『ヤングキングアワーズ』さんで描く『おやじゅ~ライダー』も、"ファンタジーバトル"とはかけ離れたものですし、『どうぶつの国』にしても子育てがメインですからね(笑)。なので、これを描きたいと言っても描かせてもらえないかもしれない……ってずっと思っていたんですよ。でも、じっくりとこういうテーマでマンガを描きたいんですって説明したら、編集の方も『じゃあ、それでいきましょう』って感じで、首を縦に振ってくれたので、それはちょっとうれしかったですね」