雷句誠氏にとっての「マンガ」、そしてメッセージ

――雷句先生にとって「マンガ」とは何ですか?

「一生をかけて続けたい仕事ですね。アイデアが枯渇してしまって、もう描くものがないなって思ったらやめてしまうかもしれませんが、生きているうちは、ペースが遅くなってもずっと描いていたいと思います。ものすごく自分にとってやりがいのある仕事ですし、この仕事ができてよかったと思っています。一番大好きな仕事ですね」

――それでは「マンガ」というものはどうあるべきものだと思いますか?

「楽しむべき場所ですね。これは藤田和日郎先生、自分のお師匠さんの言葉なのですが、やはりエンタテインメントであり、読者を楽しませてなんぼなのがマンガだとずっとおっしゃっていて、自分もその通りだと思っています。自分が楽しく描けるのが一番なのですが、読者が求めていないものを独りよがりで描いても仕方がないんですよ。読んでくれている人を喜ばせるために自分たちはどんな苦労でもするんだ、そんなこともおっしゃっていましたね」

――これから漫画家を目指している人へのメッセージなどはありますか?

「漫画家を目指している子たちに言いたいのは、負けないでくださいと、打たれ強くなってくださいということですね。自分もすごく下積み期間が長かったのですが、ネームでボツることなんて当たり前で、読み切りを何本描いても、まったく連載の話が来ない。そんなことは、けっこう当たり前のことなのですが、今の子たちはその時点であきらめてしまうことがものすごく多いんですよ。あと編集さんからきつい批判を受けると、そのまま落ち込んで描かなくなってしまう子も多いですね。たしかに批判されたら、自分も、プロになった今でも、やっぱり落ち込んでゲンナリとしてしまいますが(笑)、打たれ強くというか、だったら次はこういうものを描いて見返してやろうとか、もっと面白くしてやろうとか、結局そういうことの繰り返しだと思うんですよ。あと、自分も数々の失敗作を描いてきたのですが、そういった失敗作もちゃんと糧にしてほしいですね」

――失敗作というのは、世に出したものですか? 世に出せなかったものですか?

「両方ですね。ネームの時点で全ボツで、これは使えないよって言われるような失敗作もありますし、雑誌には載ったけれど、まったくファンレターももらえない、アンケートもダメという失敗作もあります。自分の一番大きい失敗は、『金色のガッシュ!!』の前にやった月刊連載ですね。人気もあまりなく、ハガキもこない。でも、そういった失敗作があったからこそ、ガッシュを描くときに、絶対にやってはいけないことが、身にしみてわかったんですよ」

――絶対にやってはいけないことといいますと?

「自分の身の丈にあったものじゃないと絶対に失敗するんですよ。前の失敗作は、いろいろと背伸びをして、ムリな構成、ムリな設定、もうとにかくムリムリ尽くしだったんですね。だから自分を見つめ直して、自分が一番出せる題材で描かないとダメなんですよ。でもそれは失敗して、痛い思いをしないとわからない。一発目で大ヒットを飛ばした人が、二作目で同じように描けなくなるということが、マンガの世界ではすごく多いんですよ。そうなってしまう可能性は、失敗を繰り返していれば繰り返しているほど少なくなるんじゃないかなって自分は思っています。コンスタントにヒット作を飛ばせる人は、それなりの苦労をしているんですよ、やっぱり。失敗したときに原因がわからないというのが一番怖いことなんです。なので、そうならないためにも今の失敗はムダではないと思って、とにかくトライアゲインで作り続けていけば、きっとあなたのマンガ道はうまくいくんじゃないかと私は思っています」

――失敗を失敗と認めることが大切だということですね

「そうですね。失敗を認められないと、理由もわからないままになってしまいますから」

――ちなみにその作品が失敗だというのは、描いている段階からわかっているものなのですか?

「描いているときは全力ですから、もちろんいけると思っているんですよ、でも、アンケートで思ったほどの数字が取れない。何が原因だろうと悩みつつ、いろいろとこねくり回したのですが、最後まで回復しなかったということは、やはりその当時はよくわかっていなかったんですね。アンケートの結果が悪いときはちゃんと見直さなければいけない。大きな軌道修正が必要なときは、勇気を出してやらないといけないんですよ。やはり失敗からのほうが学ぶことは多いですね」

――それでは最後に、雷句先生の新しい作品を楽しみにしているファンの方へのメッセージをお願いします

「今のバーチャルな世界、ネットをはじめ、そういった現実ではない世界が生活の大半を占めてきている中で、リアルに生きるということはどういうことなんだろう、そういったメッセージをものすごく詰められる作品で、テーマとして描ける作品になっています。今の子どもたちにとっても新しいものがたくさん入ってる作品なので、ゲームなどに飽きている子どもたち、なんとなくツマラナイと思っている子どもたちは、ぜひ手にとって読んでみてください。もしかしたら、アナタたちが求めている新しい面白さが詰まっているかもしれません。よろしくお願いします」

――ありがとうございました


雷句誠(らいく・まこと)氏プロフィール
1974年8月23日生まれ。岐阜県岐阜市出身。
1991年、岐阜三田高等学校3年時に『BIRD MAN』でまんがカレッジ入選。その後、藤田和日郎氏のもとでアシスタント(『うしおととら』中盤~『からくりサーカス』初期)を務め、合間に読み切りを多数発表。独立後の1999年から2000年にかけて「週刊少年サンデー超」で『ニュータウン・ヒーローズ』、2001年から2007年にかけて「週刊少年サンデー」で『金色のガッシュ!!』を連載。『金色のガッシュ!!』で2003年に第48回小学館漫画賞少年部門を受賞。