「1点差の接戦にふさわしいハイレベルだったのか」は、視聴者も審査員も一人ひとりが決めればいいことだろう。

ただ、昨年大会に続いて「似たようなレベルのコントが多い」のは確かではないか。審査員に言わせれば「だから93~95点が多かった」と言いたいかもしれないが、65回の採点中97点以上は2回(どちらも飯塚)のみ。これでは視聴者に「突き抜けて面白いコントがなかった」という印象を与えてしまう。

『M-1グランプリ』よりも称賛のコメントの割合が多く、何かと笑う観客席の若い女性たちも含め、『キングオブコント』には大会全体に温かいムードが漂っている。もしそれがお笑い賞レースの魅力である緊張感や明暗の差を削ぎ、優勝者が売れづらい理由の1つになっているとしたらもったいない話だ。

例えば、今回じろうが審査員になったシソンヌが売れたのも、『キングオブコント』の王者に輝いたからというより、福田雄一監督のドラマ出演や『有吉の壁』(日本テレビ)がきっかけだった。さらに、山内のかまいたちもブレイクのきっかけは『キングオブコント』の優勝ではなく『M-1グランプリ』の2位だろう。

とにかくお笑い賞レースの審査は難しい。特にバリバリの現役に任せるのは気の毒なところがあり、だからこそ松本の不在が気になってしまった。正直に言わせてもらうと、松本の漫才は好きだが、コントは「好み」ではない。しかし、そんな個人的な感覚を超えてしまうほど、審査には覚悟を持って挑み、説得力があるように見えていた。『キングオブコント2024』の不在でそう感じたからこそ、年末の『M-1グランプリ2024』に臨む審査員がちょっと心配になってしまう。