――番組作りにおいて、共通して意識されていることは何ですか?
基本的には自分が気になったことや人を扱うというのが根幹にあると思います。あのちゃんが面白いと知って、それをもっと世に知らしめたい気持ちで作ったのが『あのちゃんねる』。テレビをやってるとどんどん分かりやすさが求められる中で、櫻坂46さんのライブに初めて行ったら、マスに媚びる表現をせず、あえて分かりにくさにストイックに挑戦しているのを見て「すごい!」と思って、彼女たちのチャレンジしている姿や表現力を、バラエティと合体させることでもっと世に知らしめたいと思って『サクラミーツ』が生まれました。
一つ一つの企画でもそうですね。『あのちゃんねる』では、太陽のような超ポジティブ高岸さんと、人見知りでネガティブなあのちゃんという“まぜるな危険”を合わせたらどうなるんだろうという好奇心とか、自分が見たいものにウソをつかないほうがいいと思っています。
――スタジオセットなど、ビジュアル面もこだわっている印象があります。
そうですね。アートディレクションをお願いしてるKLOKAの矢島沙夜子さんは、百貨店でやってた展示の世界観が面白くて、一緒に仕事したいなと思って「『あのちゃんねる』という番組があって、あんまりテレビとかやらないと思うんですけど、どうですか?」と相談したら意外と面白がってくださって参加していただけました。『イワクラ吉住』も、黄色で深夜の明るいリビングをイメージにして、結構細かく「ここはこうしたい」って美術さんに指示したり。テレビ番組って画面込みで脳に残るだろうから、いいアートディレクションにしてダサいものではありたくないと思って、こだわってます。
――タイトルロゴは手書き仕様が多いですよね。
『あのちゃんねる』はあのちゃんが描いてます。彼女から発せられるクリエイティブがすごい独特で良すぎるので、タイトルはもちろん、いろんな絵を描いてもらったり、粘土作品をキャラにしたり、彼女のセンスの優れた部分をなるべくそのまま出して、濃度高く届けたいなと思ってるんです。
番組コラボフードまでこだわる「全部見ちゃうんです」
――今回指名してくれた小宮さんは、「3年くらい一緒に仕事している中でちゃんとした仕事論みたいな話をしたことがないので、聞いてみたいです」ともおっしゃっていまして。今は『アメトーーク!』と『ロンハー』から外れて自分が主導する番組を担当することで、時間もコントロールしやすくなった感じですか?
そうですね、ADの頃と比べれば仕事に左右されなくなって自分の時間を確保できるようになってるとは思うんですけど、体感的にはずっと忙しくて、全然楽にならないのでびっくりしてます(笑)。「ここは人に譲らず、自分で決めたい」っていうことが結構あって、そうなるとこだわり出しちゃうから全然手が抜けなくて。
『サクラミーツ』で作るグッズも、基本的にデザインは自分がこうしたいというものがあるので、商品化担当の人との打ち合わせに全部入ってます。丸投げしないから「こいつ、うるさいなあ」と思われてるかもしれないけど(笑)、みんなが手に取って生活の一部になるであろうグッズなので、せっかくなら素敵なものを持っててほしいなって思っちゃうんです。
――自分がグッズを買って身に付ける喜びを知っているからこそですね。
はい。それを考えるのがすごく楽しいんです。テレビ局ってこんなに何でもできるんだということにもびっくりしてます。YouTubeもできるし、番組イベントもできるし、六本木ヒルズ・テレビ朝日の夏祭りイベントでの飲食店のメニュー開発もできるんですよ。試食して「これちょっと辛くないですか?」とか言ってると、自分誰なんだろうって思ったりしますが(笑)
――もう店のオーナーですね(笑)
それもこだわっちゃうから、お店がどうなってるか見に行きたくなっちゃうんですよ。今年、『サクラミーツ』で初めて夏祭りイベントに出店したんですけど、現場に行って「この小道具、ここに置けますか?」って提案したり、SNSに「ん?」と思う書き込みがあったら「ここのオペレーション、こうしたほうがいいと思います」って指示したりして、バイトの人からしたら「すごいめんどくさい」と思われてると思うんですけど、ちょっとでも来て良かったなと思ってほしいし、不快に思う人を減らしたいんですよ。ベースに「不安」があるので、その要素を取り除きたすぎて、全部見ちゃうんですよね。
――体感的にずっと忙しい理由はそれですね(笑)
番組のSNSも基本的にはほぼほぼ自分がやってますし…。ちょっとずつ人に任せていく練習はしてるんですけど、ベースは自分で作らないと気がすまなくて。
――それでも、インプットの時間はちゃんと確保されているのですか?
あのちゃんのライブも櫻坂46さんのライブも行くし、映画を見に行ったりとか漫画を読んだりとか、気になったものは見ていますが、意味合い的には現実逃避の部分もあると思います。「SNSにこれ出さなきゃ」とか「次の収録のキャスティングどうなってるかな」とか、常に仕事のことを考えちゃうんで、そんな中で何かに没頭することでその瞬間だけ全部忘れられるという救いになってるんです。好きなものの延長が仕事になってることが多いから、オンとオフがないんですけど、忙しくても好きでやれちゃってるのかもしれないです。
ADの頃は友達と会う時間もなかったですが、最近はテレビ東京の大森くんやフジテレビの原田(和実)くんと『あたらしいテレビ』(NHK)に出て以降ちょくちょく会っていて。近況とか面白かった作品とか「これどう思う?」とそれぞれの環境でちょっと気になったことを何でも話せて、そういう同志ができたことがすごく心強かったりしてます。