――美大出身ということで、そこで学んだことが番組制作で生かされている部分はありますか?
昔は深夜でお金がないときに、番組で使うイラストを自分で描いたりしてましたね。『上田と女』に関しては、番組ロゴって、視認性が大事だと思うんですけど、ロゴって番組のセンスが一発で分かる部分だと思っていて、読みやすさはもういいやと。タイトルの文字面がダサくても、ロゴさえカッコよければおしゃれな番組に見えると思っているので、視認性を無視して、読みづらいけどカッコいいロゴにしたんです。そしたら『THE W』の副賞(番組出演権)の紹介で、「女」が読めなかったみたいで、『上田と七人が吠える夜』って間違えられちゃって。視認性を取らなかったツケがここで回ってきました。
――テロップやスタジオセットなどはいかがですか?
テロップもビジュアルの一つとしてはこだわってますね。セットに関しては、自分のやりたいおしゃれさと、みんなに受け入れられるところのバランスを取ったという感じです。
――トーク中は常にBGMが流れている印象があります。トークの内容によって曲を変えてるので、そこもこだわっているのかなと思ったのですが。
たしかに多いかもしれないですね。この選曲は、全幅の信頼を置いている音効さんにお願いしています。紅ゆずるさんが出たときにX JAPANの「紅」がかかったり(笑)。のんびりタイプの人がしゃべりだして、いい意味で空気が止まりそうだなというときに、変な曲がかかったりしてますし。
あとはSE(効果音)も多いと思います。SEに関しては、当時制作局の局長だった加藤幸二郎さん(現・日テレ アックスオン社長)に「テレビの画面を見ていなくても、耳に入っただけで“あの番組だ”って分かるSEをつけた方がいい」と言われて、トークネタがモニターに出る時など、あえて若干違和感のあるSEを音効さんに付けてもらっています。
「誰もが尊重されるべき世界」で前向きな番組作り
――近年は「コンプライアンス」がより叫ばれるようになるなど、バラエティを巡る制作の環境の変化はどのように感じていますか?
当然できないことが増えてるというのはあると思うんですけど、全然後ろ向きに思ってなくて。要するに昔はもっと弱い者に厳しい世界だったわけじゃないですか。女性もそうですけど。そこからどんどん時代がアップデートされて、誰もが尊重されるべきという世界になってきてると思うんですよね。それは当然いいことだし、様々な配慮とかもこれまで傷ついてきた人たちを守るためにやっていることなので、私はすごく前向きに、今の時代にフィットしながらやっていきたいという気持ちです。
――今後こんな番組作ってみたいというものはありますか?
やっぱり自分がロケ番組で育ってきたというのもあるので、ガッツリのロケ番組は1つやりたいなと思いますね。トーク番組はタレントさん頼りのところがあるんですが、ロケだとよりディレクターの腕が求められて、自分に向き合えるような気がするんです。なので、トーク番組はタレントさんに助けてもらっているという意識を忘れないようにしています。
――『上田と女』の正月特番で台湾の開運ロケもやっていましたし、こちらも企画・演出を担当するKing & Princeさんの『キントレ』でもロケ企画を入れていますよね。
『上田と女』でロケに出るのはあれが初めてだったんですが、好評だったのでまたやりたいなと思いますね。ロケはスタジオよりも、より人間性が出るものだと思っているので、『キントレ』ではKing & Princeの2人に毎回ロケに出てもらっています。永瀬廉くんの生意気なんだけど結果ロケが終わる頃には取材先の方にベタ褒めされる「人たらし」な部分や、高橋海人くんの「手先は器用」なんだけど「性格的には不器用」で、人見知りな自分と葛藤しながら頑張っている部分など、視聴者の皆さんに愛してもらえたらいいなと思ってやっています。
――ご自身が影響を受けたテレビ番組は、何ですか?
本当に好きな番組として影響を受けたのは『ごっつ(ダウンタウンのごっつええ感じ)』(フジテレビ)なんですけど、今の番組作りにつながってるという意味で言うと、『恋のから騒ぎ』(日本テレビ)とか『ねるとん紅鯨団』(関西テレビ)とかになりますね。
――『ねるとん』がやってた頃なんて、全然子どもじゃないですか?
5~6歳のときに見ていて、好きだったんですよ(笑)。女の子って早熟じゃないですか。大人の世界を覗き見ているような後ろめたさと好奇心があって、ほかにも『キスイヤ(キスだけじゃイヤッ!)』(読売テレビ)とか、いわゆる大人が恋愛を語るような番組が好きで見てたんですよね。『上田と女』も、周囲の人から「うちの小学生の娘がすごい好きなんだよ」と言ってもらえることがあって、大人の女性たちの話を背伸びするような気持ちで見てくれているのかなと思うと、自分の小さい頃とつながっているような気がして、うれしいです。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…
『ザ!世界仰天ニュース』の総合演出をやられている厨子王の石田昌浩さんです。超レジェンドなんですけど、番組作りに関しても働き方に関しても昔の常識にとらわれず、今の感覚にアップデートされていて、本当にすごいなと思っています。いろんな番組の演出が集まってご飯を食べたときに「次集まるときまでに誰が一番自分の番組で高視聴率とれるか争おうぜ!」って呼びかけられたり(笑)。その向上心もすごいですし、『仰天ニュース』で森友問題などめちゃくちゃ攻めた企画をやってらっしゃるし、第一線でチャレンジングなことをやり続けていて、とにかくすごいお方です。
――お仕事は一緒にされていないんですか?
一緒に仕事をしたことはないんですが、もし、自分が『24時間テレビ』をやる日が来ることがあれば、ご一緒したいなと思っている人でもあります。
――まだ女性で『24時間テレビ』の総合演出をやった人はいないので、ぜひその日が来ることを期待したいです。
番組の持っているものが重すぎるので、生半可な思いではできないという気持ちがずっとあるんです。自分があの番組をやるのにふさわしい人間なのだろうか、やるところまでいけているのだろうか…という葛藤ですね。もちろん、これまでも入社以来何かしらコーナーは担当しているんですけど、もし「やれ」と言われたらやってみたいと思います。