――「悪口を言い合う」という着想でスタートし、そこからゴールデンのレギュラー番組として成立させるにあたって、苦労した部分はありますか?
そこは結構悩みましたね。この番組のファンの方は、悪口が好きで愛してくれてる部分もあるけど、毎週悪口を言い合うのはちょっとネタ的にもきついかなと。それと、特番のときから時代の風向きが若干変わってる感じがあったんです。
前身の番組を立ち上げた2016年頃は、「インスタ映え」という言葉が流行して、SNS中心の生活でみんなストレスが溜まっている感じがあった。この番組ではSNSで感じるモヤモヤについて言及することも多いですし、そこが一番視聴者に刺さった部分だと思います。でも今はSNSのモヤモヤに言及するのも1周回った感じがあって。それと、自己肯定ブームもあって、悪口に対する風当たりも強くなってきた中で、どうやって落とし込んでいこうかと悩みました。
――炎上リスクというのは、どう考えていますか?
「悪口を言う」ということについては、こっちも演者さんも腹を決めてやってるから、多少のことは許容しますが、予期せぬところで炎上してしまうのは本意ではないので、言い回しが少し言葉足らずで、そこを切り取られてタレントさんが傷つくことがないように、編集はかなり繊細にやっています。テロップの出し方もそうですし、この言い回しはちょっと感じ悪く取られるなと思ったら、もう切っちゃいますね。
――制作側が編集でケアする分、スタジオでは臆することなく自由にやってもらおうと。
そうですね。
――4月からスタートした『上田と女がDEEPに吠える夜』は、より社会的なテーマを取り上げることになりますから、一層注意するところですよね。
そうですね。少し過激に見えたり、繊細なテーマを取り上げることも多いので、いろんな人に「倫理的に違和感があったら言ってください」とお願いしています。ただ、炎上とは言わずとも、番組のコンセプトやテーマが視聴者から敬遠されてしまう可能性もあるとは思っています。でも、視聴者から嫌われても「やる意味がある番組」だと思ってます。
数字よりも大事なことを…『DEEPに吠える夜』
――そもそも、どのような狙いで『上田と女がDEEPに吠える夜』を立ち上げることになったのですか?
ゴールデンでやっていて、もうちょっと突っ込んだ女性の悩みとか、女性に対する誤った先入観や価値観に対してもっと語れるような場が欲しいなと、ちょっと前から思っていたんです。その矢先に番組を立ち上げる機会を頂きまして。ある種の臭いものに蓋してきた部分やタブーになっていた部分をあえて取り上げて、もっと生きやすい世の中になればいいなというのが、裏テーマにあります。
――真面目な部分とバラエティの笑いの部分は、どのように考えていますか?
ゴールデンほど笑い中心ではないですが、視聴者の方の反応を見て、バランスを考えていこうと思いますね。数字よりも大事なことがあると思ってやっている感じです。
――その部分で、上田さんに助けてもらう部分もあるのでしょうか。
そうですね。性教育とか女性の下着といったテーマで、上田さんが何を語るのか想像できない部分もあったんですけど、実際に始まったら本当に見事に回してくださって。聡明でいらっしゃるので、どんな分野でも知識が豊富で、上田さんへのリスペクトがまた深まっている感じがあります。
――『news zero』の直後という枠は、社会的なテーマを取り上げるのに適しているかもしれないですね。
確かに、ゴールデンとは違う層が見てくれている感覚はあります。初回は「性教育について考える」というかなり社会派なテーマでしたが、「『上田と女が吠える夜』は見たことないけど、この番組は気になって初めて見た」というような感想もいくつかありました。とは言え、まだ24時台というのがどうなのか、自分でもつかみきれていない部分がありますね。
ただ、『月曜から夜ふかし』をやってた時間帯と考えたら、うまくハマりそうな気がします(笑)。あの番組は「『夜ふかし』だから許される」みたいなところがあるじゃないですか。なので、『DEEPに吠える夜』も、そういう解放区的な番組になっていったらいいなというのがありますね。