――若い頃からライブを一緒にやられていたバナナマンさんやバカリズムさんは、当初「テレビ的ではない」と言われていましたよね。
「お笑いマウント」をみんなが取ろうとしている時代だったから、テレビの人たちがマウントを取りにくい芸人に対してネガティブな見方をしがちだったんですよね。「どうせテレビを否定してるんでしょ?」みたいな。彼らも彼らでテレビが相手にしてくれないから、その反動でライブに力を入れてるようになって、ますます乖離(かいり)していったみたいなところはあったと思います。
だから、ライブでお金を生むような、今でいう東京03のような評価のされ方はすると思ってましたけど、まさかテレビのど真ん中に行くとは思わなかったですね。やっぱ、自分がテレビ業界で有名になればバナナマンをテレビに呼ぶことができるみたいな勝手な使命感はありました。今考えるとすごいおこがましいですけど。
――テレビで売れる要件はどのようなものだと思いますか?
ちょっと前までは、芸人が面白いボケをするというよりは、自分が何者であるか、その自分の本質=無理しない自分と、テレビ的に同じ発言ができて、それを上の人たちにいじってもらえるか、それがエンタメになっているかってことが大事だったと思います。そこにウソがあるとだんだん作業になっちゃうんだけど、本音だといくらでも言葉ができてくるから、その1ルールを作れば良かった。ただ、今はまた時代が変わってきて、果たして上の人にイジってもらうだけでいいのかって若い子たちは考え始めてると思うんですよ。テレビ的に「売れる」にはそれでいいかもしれないけど、未来のためにはどうすればいいかっていう。
――最近の若手芸人で注目する人はいますか?
みんなすごく面白いから、いまコント師として名前が挙がるような人たちはみんな面白いですよね。ただ、どう売れていいか分からないで悩んでいる人たちがすごく多い。その人たちがこのエンタメの世界でどうやって自分が金を稼ぐかという意識、プロデュース能力にもう少し目を向けたら大化けするんじゃないかって思いますね。単純にテレビバラエティで売れることが芸人としての成功だとは僕は思っていない。消費されて飽きられたで終わってしまうことが少なくないので。「売れる」という定義すら、もう変えないといけないと思いますね。
――先日の『東京03 FROLIC A HOLIC feat. Creepy Nuts in 日本武道館「なんと括っていいか、まだ分からない」』では、とりわけ吉住さんがものすごかったですよね。
吉住は、あの世代の中で笑いのテクニックではなくて、自分の感情をお客さんに届けられるパフォーマンス能力を持っている。それって本当に才能がないとできないと思うんですけど、それができるのはすごいですよね。
――今は、テレビにしてもライブにしても配信が当たり前になりましたが、この状況をどのようにお考えですか?
僕自身は配信ができてすごい良かったと思います。今は「配信バブル」みたいなことを言われてますけど、これまでは100人くらいのお客さんを相手にしていたものが、1,000人、2,000人を相手にできるようになった。「バブル」っていう言葉がついちゃったから、一度はじけることもあると思うんですけど、それをちゃんと見据えて作り上げていったら、もっと新しいものができるんじゃないかなと思います。
■目指すのは『踊る大捜査線』のような広がり
――舞台で食べていくというモデルケースを作られたお一人だと思いますが、そんな中でテレビの役割、位置づけはどう考えていますか?
やっぱりテレビは一番見やすいものじゃないですか。不特定多数の人が見られるものだから広がりもある。そういうメディアということを意識しながら、テレビはメディアの王様ではないという考え方で作っていくのがいいと思います。ひとつの企画があったとしたら、そのエンタメを見せるための一部にテレビがあって、一部にラジオがあって、一部に舞台があって…みたいに、テレビで全てを完結させるという考えじゃない方が広がりがあると思うんですよね。
――そんなテレビで、今後やりたいことは何でしょうか?
『踊る大捜査線』(フジテレビ)みたいなドラマを作りたいですね。本格的な刑事ドラマでコメディとしてキャラクターも立っていて、映画化もされたり、ひとつのテレビ番組から広がりがあるじゃないですか。スリーアミーゴスの舞台があったりとか、そこに関わるといろんなエンタメが楽しめる。アニメとかってそういう広がりが多いじゃないですか。テレビがあって、その先にキャラクターたちのラジオがあって、イベントがあってとか。そういうテレビだけで終わらない面白さを作っていきたいです。
――ご自身が一番影響を受けたテレビ番組は何ですか?
ダントツで『(ダウンタウンの)ごっつええ感じ』(フジテレビ)ですね。『ごっつ』を見て、この世界に入ろうと思ったくらいですから。昔からコントは好きでいろいろ見てたんですけど、高校のときに『ごっつ』を見て、明らかに自分の中で見る意識が変わった。ただ見ているというよりは、作り物として意識して見るようになって、俺はこういうものを作りたいんだって思わせてくれた番組です。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…
ヨーロッパ企画の上田誠さんです。劇団での自由なノリのままテレビでもやっている印象で、自分のやりたいことに実直な感じが好きですね。